【講演録】日テレプロデューサーが語るMOCO'S キッチンの舞台裏(フードメディアフォーラム) | ラテン系企画マンの知恵袋

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放送作家わぐりたかしさんが主催するフードメディアフォーラム。
わぐりさんの人脈で、毎回、普段お会いできない大物ゲストスピーカーが登壇するのですが、今回は日テレの三枝プロデューサー。ZIPのご担当で、過去には、「夜のヒットパレード」「スッキリ!」等を手掛けた敏腕プロデューサー。

今回の講演内容、ズバリ、MOCO'Sキッチン

昨年4月、ズームインからZIPに再編された際の目玉企画のひとつ。三枝Pは「世界の料理ショー」の大ファンで、情報番組の中に料理コーナーを組み込むという構想を以前から温めていた。また、当時、「恋とニュースの作り方」という映画がヒットしており、そこでも情報番組の中に料理コーナーが登場した。

そんな折、速水もこみちが所属するKEN-ONから、「もこみち、実は、料理うまいんですよね~」と紹介を受ける。その瞬間、「これだ!」とすべてが繋がり、温めていた構想の実現化に向けて動き出した。

満を持してローンチした企画であったが、放送初日の反響は惨憺たるもの。社内含め各所から猛烈に批判される。批判の内容は主に2点。「朝の忙しい時間帯に料理番組など見たくない」「分量等が書いてないので、番組を見ても料理が作れない」。要するに、料理番組として成立していないと批判されたのだ。

でも、三枝Pは、自分の信念を曲げなかった。これは、従来の料理番組とは違い、料理をするカッコイイもこみちを見る「料理ショー」なのだと。だから、分量とか細かい段取りとかは期待されていない。もこみちが華麗な手さばきで料理をする「かっこよさ」をひたすら映す。「おいしそう」「かっこいい」「おいしそう」「かっこいい」、その繰り返しで良いのだ。

もちろん、これだけだと不親切極まりない。なので、HPでは動画のアーカイブを載せ、1週間分は見られるようにすると共に、本当に作りたい人の為に分量がきっちり書いてあるレシピも掲載している。

この発想、個人的には目から鱗であった。料理番組は、見た人がきちんと再現できる様、番組の中で完結している必要があると固定観念で思い込んでいた。これだけwebが発達した世の中であるし、そもそも録画ビデオでレシピ画面を呼び出し、一時停止しながらレシピを書き写すというより、webで参照する方が明らかにスマートだ。だから、最初からそういう役割分担にして、番組の方はエンタメと興味喚起に特化すれば良いのだ。さながら、プロモーションビデオ的位置づけ。

徐々にその新フォーマットが定着し、また、時にもこみちが奇想天外なメニューをつくったりすることが話題となり、着々と視聴率を伸ばしていった。

そして、今年の2月あたりから、新たな盛り上がりを見せ始める。twitterを中心としたネット住民がいじりはじめたのだ。放映に合わせ、もこみちがオリーブオイルを投入する度に「オリーブオイル、キター!!!」とtwitter上で叫ぶ。それがやりたいが為に、早起きをするという人もいたそうだ(笑)。

「追いオリーブ」という新たなコトバが生み出されたり、「高い打点からの投入」で盛り上がったりと。

ちなみに、そのあたりの演出は、制作サイドからの指示ではなく、ほとんどがもこみちさんの考案によるものだそうです。「とにかく、彼は、いかに自分がかっこよく見えるかしか考えてないから」とのこと。

三枝Pがかねてから温めていた構想と、もこみちの人気・個性があいまって、新しいフォーマットが生み出され、人気コーナーとなった。「信念を貫く」「CGMのチカラを活用する」「出会いに恵まれる」等、ヒットの法則が凝縮された、すばらしい講演でした。

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