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「誕生日会って、祝ってもらう側がお店予約して全部払うの?!」

先日、長年の友人であるドイツ人カップル、トーマスとアンナの誕生日会に参加した時のこと。招待を受けた時、私は思わず聞き返してしまった。だって日本では、誕生日を迎える本人がパーティーを開き、飲食代を全て負担するなんて、ちょっと考えられない。

前回のブログでも触れたように、トーマスとアンナとは日本語教室で出会い、お互いの文化について語り合ううちに、すっかり仲良くなったのだ。

当日、指定された居酒屋へ向かう足取りは、期待と少しの不安でいっぱいだった。

「誕生日なのに、申し訳ない気持ちでいっぱいになったらどうしよう…。」

そんな不安は、店のドアを開けた瞬間に吹き飛んだ。

「Guten Abend!」「Happy Birthday!」「かんぱーい!」

日本語、ドイツ語、英語が飛び交う賑やかな空間に、私の顔も自然とほころぶ。10人ほどの参加者は、国籍も様々。国際色豊かな東京らしい、笑顔溢れるパーティーの始まりだ。

席に着くやいなや、トーマスが満面の笑みで近づいてきた。

「ようこそ!今日は僕たちの誕生日を祝ってくれて本当にありがとう!まずは、好きなものを頼んでね。今日は僕たちがご馳走するよ!」

「え、全部?!」

再びの私の驚きに、今度はアンナが笑顔で答えてくれた。

「そうなの。ドイツでは、誕生日を迎えた人が友達をもてなすのが一般的なんだ。誕生日を祝ってもらえることへの感謝の気持ちを込めてね。」

日本では、プレゼントを渡したり、食事をご馳走したりするのが一般的。だから、この習慣には本当に驚かされた。

「でも、大変じゃない?」

私の問いに、トーマスは肩をすくめてみせた。

「年に一度のことだしね。それに、友達と過ごす時間は何よりプライスレスだよ!」

その言葉に、私は胸が熱くなった。そう、人と人との繋がりこそが何よりも大切で、お金では買えない価値があるのだ。

テーブルには、次々と美味しそうな料理が運ばれてくる。枝豆、たこ焼き、フライドポテト、サラダ…和洋折衷のラインナップだ。ドイツビールはもちろん、日本酒やカクテル、ソフトドリンクまで、飲み物のバリエーションも豊富!

「乾杯! Prost! Cheers!」

グラスを合わせる軽やかな音と、みんなの笑顔が弾ける。パーティーは最高潮に盛り上がり、会話は尽きなかった。

会話が弾むにつれ、ドイツと日本の文化の違いについて、たくさんの発見があった。

例えば、日本では誕生日の人が職場にケーキを持っていくことはあまりないけれど、ドイツではそれが一般的だったり、日本では誕生日の当日に祝うことが多いけれど、ドイツでは誕生日の前夜から祝う「誕生日イブ」の習慣があったり…。

「へえ~!」

驚きの連続で、私の目はますます輝いていく。文化の違いは時に戸惑いを生むこともあるけれど、こうして理解し合おうとする過程は、新鮮な喜びと発見を与えてくれる。

話題は、仕事や趣味、将来のことなど、多岐に渡り、時間はあっという間に過ぎていった。気づけば、ドイツ語テーブルと英語テーブルの境界線はいつの間にか曖昧になり、言葉の壁を越えて、みんなが笑顔で繋がっていた。

パーティーの終盤、トーマスが立ち上がり、流暢な日本語でスピーチを始めた。

「今日は本当にありがとう。アンナと僕にとって、日本での生活は毎日が新しい発見で、そして挑戦の連続でした。でも、こうして素晴らしい友人たちに囲まれ、心から幸せを感じています。」

アンナも、彼の言葉を引き継ぐように話し始めた。

「私たちは、文化の違いを越えて理解し合える友情の尊さを、ここで出会ったみんなに教えてもらいました。今日、この場所に集まってくれた一人一人に、心から感謝の気持ちを伝えたいです。ありがとう!」

二人の言葉に、私は胸が熱くなった。文化の違いに戸惑うこともあったけれど、こうして築き上げた友情は、何にも代えがたい宝物だと改めて実感したのだ。

そして、パーティーが終わろうとしていた時、ふと、あることに気がついた。年を重ねることに対して、今までどこかで不安を感じていた私は、いつの間にか、心からこの誕生日会を楽しんでいたのだ。

「素晴らしいパーティーをありがとう!ドイツの習慣を体験できて、本当に楽しかったよ!」

帰り際、私は二人に精一杯の感謝の気持ちを伝えた。

「こちらこそありがとう!日本で暮らしながら、こうして自分たちの文化も大切にできること、そしてそれを受け入れてくれる友人がいること、それが何より嬉しいよ。」

トーマスとアンナは、私の言葉に満面の笑みを返してくれた。

「文化の違いは、時に戸惑いを生むかもしれない。でもね、それを理解し合おうとすることこそが、私たちを成長させてくれるのよ。」

アンナの言葉が、私の心に深く響いた。

家路に着く足取りは、軽やかだった。ドイツ流の誕生日会は、日本の感覚とは全く違うものだったけれど、そこには「感謝」と「分かち合い」の精神が溢れていて、文化を超えて共感できる部分がたくさんあった。

そして、年を重ねることは、ただ歳をとることではない、新しい出会いを通して自分の世界を広げていく、素晴らしいチャンスなのだと気づいたのだ。

今回の経験は、私にたくさんの気づきと勇気を与えてくれた。これからも、年齢を重ねることを恐れずに、一日一日を大切に生きていこう。そして、トーマスとアンナのように、自分の文化を大切にしながら、他の文化も受け入れる心の広さを持ち続けたい。

…そういえば、もうすぐ私の誕生日がやってくる。今年は、日本とドイツの良いところをミックスさせた、新しい形の誕生日パーティーを開いてみようかな。文化の架け橋になれるような、そんな温かい会を。

明日からまた始まる日常。でも、今日の経験を胸に、新しい視点で世界を見つめていきたい。だって、多様性を受け入れ、互いの違いを尊重し合える社会を創るのは、私たち一人一人なのだから。