占いをほとんど信じないので、占いを本気で信じる人を不思議な気持ちで見てしまう。

 

最近、図書館で借りてきた「お金がない!」というエッセイ集を読んでいる。

書いているのは、群ようこ、佐野洋子、平松洋子、中島らも、蛭子能収、三木卓坂口安吾、

太宰治、伊丹十三、酒井順子、瀬戸内寂聴、深沢七郎、新見南吉、光野桃、寺山修司と様々だ。

 

その中で、寺山修司さんが、「手相直し」という文を書いている。

彼は1935年生まれだ。

 

子どもの頃、人から「生命線が短いから短命だ」と言われた彼は、手相を変えてくれるというおじさんに、手相を変えてもらいたいと強く思った。

それには、500円が必要だと聞いて、お金がなかった彼は、家の柱時計をこっそり風呂敷に包んで、二駅先の質屋に持って行った。

 

しかし、柱時計は500円を貸してもらう価値はなく、途方に暮れながら、すごすごと家に帰った。そして、手相を自分で変えようと、釘で手のひらを傷つけ、手相を変えようとした。

手のひらを血だらけにしたが、手相は変わらなかったようだ。

 

生命線ひそかに変へむためにわが引き出しにある一本の釘

 

これは、彼の作品だ。

 

このエッセイを書いた時の彼は30歳を少し過ぎた頃だろうか

「今では自分の手相の長さを追い越して30歳を超えてしまったのである。」と書いている。

 

でも、彼はネフローゼの治療の輸血が原因の肝硬変にかかり、47歳で亡くなった。

1983年の47歳は十分短命だ。

手相占い、少し怖い。

 

瀬戸内寂聴さんが、26歳で子どもと夫を置いて家出をする時に、追いかけてきた夫に

「コートとマフラーを置いて行け!それから、財布もおいて行け!」と言い。言われた寂聴さんは、もっともだと納得して、コートとマフラーをたたんで、その上に財布を置いて、冬の寒空に何ももたずに家出をした話も、時代だなと思った。

寂聴さんは1922年生まれだ。