もう10年以上前の出来事だから、時効だから、話すね。と前置きをして、Fさんが話始めた。

 

実家の近くにに50代後半と思われるご夫婦が、中古物件を購入して移住してきた。

近所の人とも仲良く、普通にお付き合いをして、区にも入っていたので、同じ班の中でお葬式があった時には、顔出しをしたり、お手伝いもしていた。

 

ところが、数年後、ご主人が病気で亡くなった。

それを知った近所の人たちが、慣習にしたがって、枕元へお線香を上げに行くと、ご遺体がなかったのだそうだ。

今では、葬儀会場へ病院から直行というのも珍しくないが、その頃は、こちらではほとんどなかったので、近所の人はびっくり!

 

後でわかったのは、そこに住んでいた二人は夫婦ではなく、女性は夫と2人のこどもをおいて、男性は妻と一人の子どもをおいて家を出ていたのだった。

 

男性が亡くなったことを知らせると、本当の妻が連れ戻しに来て、連れていってしまったのだそうだ。

 

ドラマみたいだと思った。

 

その時、私はある人を思い出した。彼女のケースも、普通の感覚からしたら、うそでしょ!

と言われるケースだ。

夫の葬儀を担当した、葬儀社の若い人と恋に落ち、一周忌を待たずに家を出て、一緒に暮らし始めた。でも、夫の死の前にも悲しい出来事があって、彼女が生きていくにはその人が必要だったと思うので、私は彼女を責めない。

 

亡き夫の遺族年金を受け取るために、籍はいれないんですって。

そんな噂も耳にした。その後のことは、誰も知らない。

 

生きていれば、彼女も後期高齢者。どんなおばあちゃんになっているかしら?