70年以上生きてきても、私の周りには「ベジタリアン」は一人もいなかった。

肉が嫌いな人や、魚が嫌いな人や、アレルギーがあるので食べるものに制限がある人はいたが。

 

割に最近知り合った人が、ベジタリアンだった。

食事会の参加者の予定を聞いている時に知った。

気の利いたレストランでは、ベジタリアンの特別メニューを提供するところもあるようだが、地方の小さなレストランでは、対応できないということで、その人だけ、自分の食べられるものを注文してもらった。

 

会食の中で、なぜベジタリアンになったのかとメンバーのひとりが聞いた。

その答えが、私にとっては「えっ?」だった。

「殺生をしたくないから」というのだ。image                                     考えてみれば、精進料理だって、同じ理由なのだから、まったく驚くことではない。

人間が生きてゆくには、生き物の命をもらうのは、仕方がないと思っていた私だったので、びっくりしたのだ。虫も殺したくないので、家に入って来た虫は、コップと葉書を使って生け捕りにして、外に逃がすという。暖かい季節には、道路にいるアリを踏まないように、気を遣いながら歩くという。

 

農作物につく虫を「敵」とみなし、平気な顔で大量殺戮を繰り返す自分が、プーチンと同じ種類の人間に思えて、恥ずかしい。

 

自分の健康のためにベジタリアンになったとしか思わなかった私って、なにもわかっていない人間だった。

 

そんな話をしていたら、インドのジャイナ教のことを思い出した。

やはり殺生を禁じる宗教で、根菜も地中の生き物を殺す危険があるので、食べてはいけないとか。

 

息子が以前、インドの友人の結婚式に呼ばれてインドに行ったのだが、友人がジャイナ教の信者だった。その時の話で、一番びっくりしたのは、聖職者の正装が・・・

身に何もつけない姿だというのだ。

生まれたままの姿が一番神聖ということらしい。

 

息子が撮った一枚の写真には、一糸まとわぬ姿で道を歩く男性の後ろ姿と、向こうから歩いてくるサリーをまとった女性が写っていた。女性の表情は、ごく自然で、何事もないかのように歩いていた。

 

他の場所では、警察が呼ばれて、逮捕だよね。

 

世界は知らないことであふれている。