友人Aは90代のお姑さんと暮らしている。

軽度の認知症で、尿パッドを自分で取り換えることはできるが、取り換えるように言わなければ、ずっとそのままだという。今は週に3回デイサービスに行っている。

 

Aは、もう90歳を超えていれば、そんなに先は長くはないだろうと、お姑さんのために、自分のやりたいことや行きたいことを我慢してきた。ところが、お姑さんの食欲は旺盛で、ひょっとすると100歳を超えても生きていそうな気がしてきたという。

うちのおじいさんも寝たきりで95歳の誕生日を迎えた時には、私も同じことを思ったから、彼女の気持ちはよくわかる。

 

Aは膝の痛みもでてきたこともあって、自分はいつまで普通に歩けるのだろうかと不安になった。歩けるうちに行きたい所へ行かなければ、行けなくなってしまう、と思ったAは、我慢は最小限にすることにした。

 

夫と出かける時には前もって姑のショートステイを申し込み、行きたいバスツアーがあったら一人でも参加することにした。最初は不安だったが、実際行ってみると一人参加の人も思ったより大勢いて、平気になったという。私が興味がありそうなツアーの時には声をかけてくれて、一緒にいったりする。彼女の夫も、彼女の留守中、母親の面倒をみてみて、いかに大変なことを日頃妻がしているかわかったというから、一石二鳥だ。

実際にやってみないと、介護の大変さはわからないものだ。

 

Aは言う。「我慢をしていた時は、毎日、いつになったら解放されるのかと思っていたんだよね。そして、そんなひどいことを思っている自分が、いやでいやでたまらなかった。」と。

この先、どうなるかわからないけど、場合によったら、施設入所も考えればいいや、と思ったら前ほど自分が嫌いじゃなくなったわ、と笑った。