新聞の訃報欄で見かけた名前に、なんとなく見覚えがあった。
住所は私の故郷。年齢は50代後半。
やはり、あの時の少年だ。
「バイバーイ」「元気でね。バイバイ」と軽い別れの挨拶をかわしてからは、ほとんど思い出すことのなかった名前なのに、脳の片隅にその名前は残っていた。
「よっ、今日は化粧ののりがいいね!」なんて、背伸びをした言葉で話しかけてきたあの子。
夜遊びをして、お肌の調子が悪い時には決して、褒めてくれなかった。
なんとなく気が合って、ふたりでおしゃべりをすることが多かった。
足が長くて、スポーツが得意で、ハンサムな小学生。
私が彼と話していると、その子が去ったあとに、同じクラスの女の子が、怖い顔をして
「○○君が大人になるころには、あなたなんておばあさんになるのよ!」と言ってきた。
頭の中で「30過ぎはおばあさんとは言わないわよ」とつぶやきながら、小学生にライバルとしてみられたことを楽しんでいた。
自分にとって、どうということのない会話だったのに、50年も経っているのに覚えていることに驚いている。
今、手元には、その少年と二人で写っている写真がある。彼はジャニーズの少年のようにポーズを決めている。誰に撮ってもらったのだろう?すると、その時に撮ってもらったもう一枚の写真を思い出した。そこに写っている5人のうち、生きているのは私だけだ。
わたしは本物のおばあさんになったのに、君はもうこの世にいないのか。
大人になった君に会いたかったな。