「お母さん、魔法使いのおばあさんになりたいんだよね。」というと、高校生の息子が

「魔法は使えないけど、おばあさんには確実になれると思うよ」と返してきた。

「いやいや、長く生きないとおばあさんにはなれないよ。」と私は答えた。

あの時、私はどんな魔法を使いたかったのだろう、何をしたかったのだろう。

どんなに思い出そうとしても、それは思い出せなかった。

 

ブログを毎日書くようになって、忘れていた昔のことを思い出すことが多くなった。

ナンクロや百マス計算より脳には刺激を与えている気がする。

 

仕事をしている頃、年に何回か研修ということで、直接仕事に関係のない内容の話を聴くことがあった。今思えば、贅沢で素敵なことだった。

残念ながらそのほとんどは忘れてしまっているが...

 

二十代の頃に女性の保健所長のお話を聴いた。

あの頃、長野県では脳溢血で亡くなる人も多く、介護保険制度もなく、後遺症のある病人の世話をするのは「嫁」の務めだとされる風潮があった。

だから女たちは、自分は人の面倒にならないであの世に行きたいと切に願っていた。そんな私たちの心を見透かしたように彼女は言った。

 

「若いうちに病気で倒れると大変です。身体は不自由になっても、他の臓器の寿命はまだまだなので、なかなか死ねません。でも、90歳になってから病気になれば、90年使ってきた身体はぼろぼろです。多分数年以内に確実にあの世に行けるでしょう。ですから皆さんは病気になるのをできるだけ先延ばしにするよう、こころがけてください。」

いい話だった。

 

この話を聴いたからということではないが、この研修会に参加したメンバーで在職中に病気になって退職した人はいない。ただ、二人は病気で突然亡くなった。