*本記事は2018年1月29日にyahooブログに投稿したものです。yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに転載しました。
祈りの幕が下りる時
制作国:日本(2018)
監督;福澤克雄
脚本:李正美
主演:阿部寛、松嶋菜々子
評価:★★★☆☆(星3つ)
東野圭吾原作の『加賀恭一郎』シリーズの完結編です。私はこの『加賀恭一郎』シリーズは『新参者』の原作を読んだのが一番最初で、それ以降全ての原作を読みましたが、お話としては『新参者』がダントツで面白く、正直それ以外の作品のことはあまりよく覚えていません
『祈りの幕が下りる時』も原作を読んだはずなのですが、もうほとんど内容を覚えていないほぼ真っ新な状態で観賞しました。
お話、演出とも良いところもある、悪いところもある…という感じです。
あらすじは東京都葛飾区で殺人事件が発生。殺害現場のアパートの住人も行方不明となっていた。被害者の女性は殺害される前に中学の同級生で舞台演出家の浅居博美(松嶋菜々子)に会っており、彼女が容疑者の一人として浮上する。事情聴取のために博美の事務所を訪れた松宮刑事(溝端淳平)は、そこでいとこの加賀恭一郎(阿部寛)と博美が以前からの知り合いであることを知る。日本橋署に勤める加賀にとって今回の事件は管轄外であったが、加賀の母親の遺品のカレンダーと殺害現場の部屋にあったカレンダーにどちらも日本橋を囲む12の橋の名前が書かれていたことから、加賀は事件の捜査に参加することになる。
*ここからネタバレです。
殺人の犯人は博美の父親(小日向文夫)でした。殺害現場のアパートの住人も彼で、彼を殺したのが博美でした。この父娘は博美が中学生のときに母親が家の全財産を持ち逃げしてしまったため、借金取りに追われて夜逃げした過去がありました。逃避行の際中に、博美は自分をレイプしようとした男を殺してしまいます。父親はその男と入れ替わって生きることを決意し、博美とともに自身の自殺を偽装します。それ以来この父娘は自分たちの本当の関係を気づかれぬように一目を忍んで会っていました。その待ち合わせ場所がカレンダーに書かれた橋だったのです。しかし、博美の中学時代の同級生が父親に気付いてしまい、あえなく殺されることになってしまいました。隠れて暮らす生活に疲れた父親は博美にもう終わりにしたいと懇願します。博美は父親の願いを聞き入れて自ら父親を手をかけたのでした。
最初にも書いたように良いところもあったし。悪いところもあった作品でした。
まず悪いところから書くと、そもそもこの作品、「なんで今これ作ったの?」です。加賀シリーズは一番新しいものでもスペシャルドラマで3年前、その間原作本も出ていませんから、なんとなく旬が過ぎたころに映画化された感が否めません。ドラマファンへのサービスとして連続ドラマの時に登場した日本橋の住人がエンドクレジットで出てくるのですが、もう誰が誰だか思い出せませんでした(香川照之や杏が出てるのですが、ものすごい無駄遣いな感じ)。
そして全体的に2時間ドラマっぽいです。もちろんいいところもあったのですが、全体的にあんまり映画っぽくないなと思ってしまいました。特に冒頭数分のやたらと沢山出てくるテロップや、中盤の加賀の長いモノローグなどは他にやりようがあった気がします。
お話面の突込みは最後に出てくる監視カメラの映像です。あんな決定的な映像があるならこの事件についてもっと早く色々な手がかりが掴めたんじゃないかと…。そもそもこの事件は殺された女性が中学時代の同級生の父親の顔を覚えていたから起きてしまった事件だったわけですが、正直そんなに友達のお父さんの顔なんて覚えているもんじゃないですよね。
あとお話の中で、この父娘は気付かれないようにこっそり会わなければならない、ということになっているのですが、動物園で再会するシーンでは一緒にベンチに座っちゃってますし、正直隠れて会わなくてはならない理由は別になかったんじゃないかと…。それよりも父親が昔の知り合いに会わないように生きることの方が大切だったのではないかと思います。事実作中でも一緒にいるところを見つかったのではなく、昔の知り合いに会ってしまったことが事件の発端になっていますし。
あとつっこみではないですが、同じ東野圭吾原作の『容疑者xの献身』『真夏の方程式』も身代わりトリックのミステリーなので東野圭吾は身代わりものが好きなのかな、とぼんやりと思いました。
良かったところはこの父娘の夜逃げの回想のくだりです。ここが凄くよいのでぐっとこの犯人二人に感情移入できて、映画としての出来に貢献していると思います。博美が最初の殺人を犯してしまうときのワゴン車を無音でずーっと映しているカットの不穏さ、不気味さだったり、トンネルで父娘が一度別れた後にもう一度戻ってきて抱き会うシーンなどは印象に残りました。
今年ベスト…とかにはならないと思いますが、加賀シリーズのファンなら観て損はないのではないかと思います。