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潜水服はモスラの夢を見る

主に映画の感想を語るブログです。

*本記事は2018年5月19日にyahooブログに投稿したものです。yahooブログ閉鎖に伴いこちらに転載しました。

【映画の感想 No.18】GODZILLA 決戦機動増殖都市

 

        

制作国:日本(2018)
上映時間:101分
監督:静野孔文、瀬下寛之
脚本:虚淵玄
声の出演:宮野真守、櫻井孝宏 他

あらすじ
ゴジラに蹂躙された地球を取り戻すため決死の戦いに挑んだハルオ(宮野真守)をはじめとした人類だったが、地中深くから現れた真のゴジラ=ゴジラ・アースに敗退。ハルオは、かつての地球人類の生き残りと目される「フツア」と呼ばれる民族の少女ミアナ(小沢亜季)に助けられる。フツアもかつてゴジラに敗れたと言い伝えられていたが、彼らの持つ金属のナノメタルが、21世紀に対ゴジラ決戦兵器として開発されたメカゴジラを構成する物質と同じものであることが判明。メカゴジラの開発プラントがいまだ残されていることが明らかになり……。(映画comより)

評価:★★★☆☆

◆感想(ネタバレなし)
ゴジラvsランペイジの日だった5月18日、日本男児たるものまずはゴジラ!!と思い、ゴジラの感想から書きたいと思います。

今作の話の前に前作『怪獣惑星』について書きたいのですが、実は前作はあまり良く無かったと思っています。というのも本来最大の見せ場であるアクションの描き方があまり上手くないように思ったのです。クライマックスの戦闘は、限られた人員と資源でゴジラをA地点からB地点へ誘導しなくてはならない、ということだったと思うのですが、AからBまでどのくらい距離があるのか、ゴジラはどのくらいの速さで進んでいるのかといった情報が視覚的には提示されないのであまり緊迫感が無かった気がします。ゴジラ自身のアクションにもあまり印象に残る場面が無かったのも残念でした。(★の評価でいうと★2つです)

それを踏まえ今作の評価はどうかというと、思っていた話と全然違ったけど、前作より良かったと思います。上に書いたような前作についての不満だった部分はだいぶ改善されていたように思いました。前作ではただ倒すべき相手だったゴジラが確かに神たる存在であることを示せていて、それだけでもゴジラ映画としては合格だと思います。

ただ事前の宣伝から予想していたものとかなり乖離があったので、期待していたものと違った
ガーンというがっかり感も残ってしまったのも事実です。これははっきり作品にとってマイナスの宣伝だったと思いますし、東宝が自社の看板キャラクターであるゴジラというコンテンツをどこか信じ切れていない感じがしてしまいました。

後は「フツア族」と「ナノメタル」という新しい設定の説明に割かれる時間が割と長く、上映時間101分の作品としては前半かなりもたついた印象を受けました。前作が世界観の説明で終わってしまったいただけに、今作はもっと序盤から見せ場が欲しかったです。

*以下ネタバレです



◆ネタバレ
ハルオたちはフツア族にナノメタルの在り処まで案内してもらう。そこはかつてメカゴジラの開発プラントであり、ナノメタルが自ら進化して巨大な都市を作り上げていた。「メカゴジラシティ」と名付けられたその都市にゴジラを誘い込み、前回ゴジラを倒したのと同様の方法で迎撃する作戦が立てられる。そのためには都市の要塞化が必要となるが、徹底した合理主義を唱えるビルサルド人は自らをナノメタルに融合して都市の要塞化を進めており、ビルサルドのガルグ(諏訪部順一)とハルオはこの是非を巡って口論となる。その最中にゴジラがメカゴジラシティに向けて動き出したという情報が入る。ガルグとの口論で動揺した仲間たちの士気を取り戻すためハルオは自らビルサルドがナノメタルで作った兵器、ヴァルチャーに乗り込みユウコ(花澤香菜)、ビルサルドのベルベ(三宅健太)と共にゴジラをメカゴジラシティに設置したトラップポイントに誘導する。

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作戦は成功し電磁パルスの暴走を引き起こすことに成功するが、ゴジラは爆発せず逆に熱エネルギーで周辺の気温の上昇させ始める。これがゴジラの攻撃であることに気付いたマーティン(杉田智和)は人間が耐えられない温度になる前に人員を退避させるが、ガルグは自らをナノメタルに融合して作戦を続行。ヴァルチャーに乗るハルオとユウコにもナノメタルとの融合を迫る。フツア族の鱗粉による治療を受けていたハルオはナノメタルに対する耐性があったが、そうでないユウコはナノメタルとの融合が始まってしまう。ユウコを救うためハルオはガルグのいる司令部をヴァルチャーで爆撃する。再び立ち上がったゴジラは熱戦を放ちメカゴジラシティを完全に焼き尽くす。
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◆感想(ネタバレあり)
結局、私たちが良く知っている機械のゴジラとしてのメカゴジラは登場しませんでした
ガーンあらすじに書いたようにメカゴジラの残骸のナノメタルが進化してできた街が舞台になるだけです(メカゴジラシティというかナノメタルシティなのです)。これは宣伝の仕方としてどうかというレベルですよね、ほとんど虚偽記載の域だと思いますムキー何が腹立たしいかというと、今作に出てくるゴジラは神としての威厳のあるちゃんと魅力的なゴジラなんですよね。だからこそ、このゴジラのことを信じて素直にゴジラの魅力を推した宣伝をすべきだったと思います。なんだか今回の宣伝の仕方は、このゴジラの存在だけでは集客できないと思って、いわゆる「vsもの」のふりをすることに逃げてしまったように思うのです。それは結局のところ「ゴジラの魅力とは何か」ということを実は東宝がわかっていない、ということなのではないでしょうか。

あと事前の予想で間違いなく出る、と豪語していたモスラも出ませんでした
えーん予告編で出てきた↓の映像はモスラの鱗粉ではなくナノメタルの粒子でモスラの鱗粉と同じくゴジラの熱戦を反射することができ、劇中ではメカゴジラシティの防備に使われていました。
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というわけで事前の宣伝に振り回されて結構がっかりしてしまった部分が多かったのですが、良かったところももちろんあった作品です。以下に列挙したいと思います。

①前作よりちょっとだけ見やすくなったアクション
前作についての不満で、アクションの描き方について、ゴジラをどこまで誘導すればいいのかわかりにくいという主旨のことを書きましたが、今作は少し見やすくなっています。ゴジラをメカゴジラシティに誘い込んだ後、トラップポイントまで誘導路が出現するので、その誘導路を基準にゴジラとトラップポイントと戦っているヴァルチャーの位置関係が把握できるようになっています。ゴジラそのもののアクションも前作より良かった気がします。

②神としてのゴジラ
既に述べたことですが、今作のゴジラはきちんと神として描かれているように感じました。具体的に言うと破壊神であるとど同時に守護神としても描かれていました。結局ナノメタルの増殖を許せば地球そのものがナノメタルと融合することになってしまうので、今作のゴジラは明らかにそれを阻止するために戦っていました。こういう怪獣に肩入れしたくなる要素があることが、個人的には怪獣映画に求めることなので、これをやってくれただけでも結構満足度は高いです。

③ゴジラを倒すこととはどういうことなのか
その神たるゴジラを倒すとはどういうことなのかについて、今作での解釈が明言されます。予告編にもあったハルオの“人としてゴジラに打ち勝つ”というセリフは劇中ではビルサルドのガルグにたしなめられます。“その言葉の矛盾に気づかないのか?人が倒せないから怪獣なのだ”と。神たる怪獣を倒すためには人ならざるものに至らなければならないというのがガルグの主張なのです。このセリフを聞いて私は1954年の一作目のゴジラについての町山智浩の解説を思い出しました。(↓がその動画です)1作目ではゴジラを倒すに際してオキシジェン・デストロイアを使うわけですが、そのオキシジェン・デストロイアを作った芹沢博士はいわばゴジラに匹敵する存在として描かれています。芹沢博士はそのことに気付いていたし、それを恐れて自ら命を絶ってしまうわけですが、今作のガルグは「自分の力を恐れていなかった場合の芹沢博士」のように見えました。

       
このゴジラを倒すということは神にも匹敵する恐ろしい力を有してしまうことなのだ、という描写は実は『シン・ゴジラ』にはなかったことだと思います。『シン・ゴジラ』のゴジラは震災のメタファーとしての側面が強く、あくまで日本人が総力を挙げて乗り越えるべきものでした。映画全体としての評価はともかく、少なくともゴジラの描き方としては私は今作の方が『シン・ゴジラ』より好みでした。

④ユウコのおっぱい(笑)
スーツを脱いだシーンだと割と主張しているなと(どうでもいい下衆な文章)
照れ
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おっぱいは冗談として②と③は特に今作で良かったと思うところです。ではダメだったのはどこかというと

①事前の宣伝
もう何度も言っていますがこれが諸悪の根源です。なまじモスラが出るのを期待して観に行ったがためになんだか食い足らない感じが残ってしまいました。

②前半の展開の鈍重さ
↑これは既に述べたとおりです。

③ビルサルドが悪く描かれすぎ
今作のクライマックスはハルオとガルグの思想的な対決にあるわけですが、あらすじにも書いた通り中盤でも一度ハルオとガルグは口論してしまっているので、クライマックスでまた同じ話をしているように見えてしまいました。個人的な好みの問題だと思いますが、クライマックスまではもう少しビルサルドにも理があるように描いた方が、ラストでのハルオとガルグの決別がより際立ったように思います。

④割とトラブルが起きるメカゴジラシティ
良く無かったというよりただの突っ込みです。メカゴジラシティは人工の雲で覆われていて、それによってゴジラに見つからないようになっていた、という設定なのですが、要塞化の最中にその雲を取り去ってしまうのです。理由はその雲を作ることより要塞化を速く済ませた方が高率的だから、という理由なのですが、ゴジラの接近に伴って砲台の台座が壊れたりと、割とトラブルが起こってあたふたするのがなんだかおかしかったです。

総じて別につまらなくはなかったし、ゴジラの描き方についてはむしろ良くやっていたぐらいだと思うのですが、期待していたものとのギャップのせいで素直に評価できない感じです。ラストでエクシフの母星を滅ぼした怪獣が“ギドラ”であることが明かされ、続編のタイトル(『GODZILLA 星を喰う者』)とキービジュアルが出ましたが、本当に怪獣として出てくるのか凄く不安になってしまいました。

◆まとめ
・メカゴジラもモスラも出てこない。対決ものではない。
・事前の宣伝内容とのギャップのせいで評価がしにくい
・神としてゴジラが描かれているのが良い。