*本記事は2018年5月24日にyahooブログに投稿したものです。yahooブログ閉鎖に伴いこちらに転載しました。
29歳問題
製作国:香港(2017)
上映時間:111分
監督:キーレン・バン
脚本:キーレン・バン
出演:クリッシー・チャウ、ジョイス・チェン 他
あらすじ
香港の化粧品会社で働くヨックワンには長年付き合っている彼氏もおり公私ともに充実した日々を送っていたが、30歳の誕生日を1カ月後に控える中、仕事のプレッシャーや彼氏とのすれ違いが重くのしかかってくる。さらに、借りていたマンションの部屋からも一方的に追い出されてしまい、パリ旅行中の女性ティンロの部屋を仮住まいとして借りることに。部屋で見つけたティンロの日記を読んでみると、彼女はヨックワンと同じ年で誕生日も同じだった。日記を読み進めたヨックワンは、楽天的なティンロの気ままで幸せそうな日常に惹かれていく。(映画.comより)
評価:★★★★☆
◆感想(ネタバレなし)
結論から言うと結構良かったです。私自身が主人公と同じ20代後半なので、今作で描かれる20代後半あるあるに凄く共感できました。いろいろな観方のできる作品なのだと思いますが、今作のテーマは「時間が過ぎていくことの容赦の無さ」なのではないかと思います。20代後半は肉体的な若さのピークが過ぎる年齢であり、時間というのはこちらの意思とは関係なくどんどん過ぎて行ってしまうのだということが、文字通り肌感覚で分かるようになる年頃の様に思うのです。単なる結婚の適齢期が過ぎるみたいなことではなく、人生そのものが確かに過ぎていってしまうものなのだと感じるようになる年齢が20代後半なのではないでしょうか。
観るまで知らなかったのですが、元は舞台作品で、今作の監督のキーレン・バンが製作、脚本、主演の一人芝居なのだそうです(今作のエンドロールでその舞台版の模様が少しだけ映ります)。舞台と映画とでどんなところを変えたのかはわかりませんが、舞台では一人二役だった主人公二人をそれぞれ別々の役者さんに変えたのは大正解だと思います。特にウォン・ティンロを演じたジョイス・チェンの絶妙な垢抜けなさは見事でした。
映画的にとても良いシーンだなと思ったのは三つあって、一つが冒頭で主人公のヨックワンが朝の支度をするシーン。「テキパキ」という音が聞こえてきそうなテンポ感で、特に仕事の描写を見せてなくてもこの主人公が仕事が出来る人なのだというのが伝わってきました。
二つ目はヨックワンが学生のときの女友達と飲み会をしているシーン。学生の時に戻ったような楽しいのりの一方で、それぞれが親だったり、結婚したりとそれぞれの立場が変わっていく感じがすごく20代後半の実感としてリアルでした。
三つ目は中盤でヨックワンが“決定的に取り戻せない時間”と対面することになるシーンです。ヨックワンの回想とももう来ない未来とも取れるこのシーンは、非常に切なく、まさに「時間が過ぎていくことの容赦の無さ」を突きつけられる場面であり今作の白眉と言えると思います。
ただ、残念だったのが予告編の段階で割と結末が読めてしまった部分があったことと、その結末と共にもたらされる今作の結論が観方によってはちょっと不快な部分があることです。これについてはネタバレになってしまうので後述したいと思います。
あとは、ヨックワンの心境や日常を丁寧に追っていた前半~中盤に比べると、中盤~終盤までに起こる出来事は全て割と唐突な印象があります。なんとなくですが、話が後半に進むにつれて雑になり「お話のためのお話」を展開している感じがしてしまいました。
ただ、20代後半の人にとっては共感できることも多い作品だと思います。主人公と同年代の今観ることが出来て良かったと思う作品でした。
*ここからネタバレです
◆ネタバレ
ヨックワンは仕事を辞め、浮気をしてる彼氏とも別れ、これまで自分が築いてきたものが崩壊していくなかで、ティンロの日記を読み進める。そしてティンロが実は乳癌を患っていてパリ旅行の後に手術が控えていることを知る。ティンロの“一日一日が人生の終わりに近づくことだと悟った(*ちょっとうろ覚えです)”という言葉にヨックワンは励まされる。
◆感想(ネタバレあり)
そもそも人の日記を勝手に読むってどうなのか…という元も子もない意見は置いておくとして
この話の結論は時間はどうしたって過ぎるものなのだから今を精一杯生きるしかない、ということなのだと思うのですが、ヨックワンだって相当一生懸命生きている人として描かれているので、この日記で励まされる展開が私は良くわかりませんでした。観方によっては“自分より不幸な人間が頑張ってるから自分も頑張る”的な話に見えるので、不快に思う人もいるような気がします。
◆まとめ
・20代後半の人には実感を伴って観られる部分が多くおすすめ
・中盤以降お話が尻すぼみな感じになるのが残念