*本記事は2018年6月10日にyahooブログに投稿したものです。yahooブログ閉鎖に伴いこちらに転載しました。
万引き家族
制作国:日本(2018)
上映時間:120分
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
出演:リリー・フランキー、安藤サクラ 他
あらすじ
街角のスーパーで、鮮やかな連係プレーで万引きをする、父の治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)。肉屋でコロッケを買って、寒さに震えながら家路につくと、団地の1階の廊下で小さな女の子(佐々木みゆ)が凍えている。母親に部屋から閉め出されたらしいのを以前にも見かけていた治は、高層マンションの谷間にポツンと取り残された平屋に女の子を連れて帰る。母の初枝(樹木希林)の家で、妻の信代(安藤サクラ)、彼女の妹の亜紀(松岡茉優)も一緒に暮らしている。信代は「もう少し金の匂いのするもん拾ってきなよ」とボヤきながらも、温かいうどんを出してやり名前を聞く。「ゆり」と答える女の子の腕のやけどに気付いた初枝がシャツをめくると、お腹にもたくさんの傷やあざがあった。深夜、治と信代がゆりをおんぶして団地へ返しに行くが、ゆりの両親が罵り合う声が外まで聞こえる。信代には、「産みたくて産んだわけじゃない」とわめく母親の元に、ゆりを残して帰ることはできなかった。
翌日、治は日雇いの工事現場へ、信代はクリーニング店へ出勤する。学校に通っていない祥太も、ゆりを連れて〝仕事”に出掛ける。駄菓子屋の〝やまとや”で、店主(柄本明)の目を盗んで万引きをするのだ。一方、初枝は亜紀を連れて、月に一度の年金を下ろしに行く。家族の皆があてにしている大事な〝定収入”だ。亜紀はマジックミラー越しに客と接するJK見学店で働き、〝4番さん(池松壮亮)”と名付けた常連客に自身と共鳴するものを感じ、交流がはじまる。
春の訪れと共に、「荒川区で5歳の女の子が行方不明」というニュースが流れる。両親は2ヶ月以上も「親戚の家に預けた」と嘘をついていたが、不審に思った児童相談所が警察に連絡したのだ。ゆりの本当の名前は「じゅり」だった。呼び名を「りん」に変え、髪を短く切る信代。戻りたいと言えば返すつもりだったが、じゅりはりんとして生きることを選ぶ。信代は、「こうやって自分で選んだ方が強いんじゃない?」と初枝に語りかける。「何が?」と聞かれた信代は、「キズナよキズナ」と照れながらも、うれしそうに答えるのだった。
時は流れ、夏を迎え、治はケガが治っても働かず、信代はリストラされるが、それでも一家には、いつも明るい笑い声が響いていた。ビルに囲まれて見えない花火大会を音だけ楽しみ、家族全員で電車に乗って海へも出掛けた。だが、祥太だけが、〝家業”に疑問を抱き始めていた。そんな時、ある事件が起きる──。(公式サイトより)
評価:★★★★☆
◆感想(ネタバレなし)
是枝監督の作品は『誰も知らない』『海街ダイアリー』『海よりもまだ深く』『三度目の殺人』につづく5作品目の観賞でした。個人的には『海街ダイアリー』『三度目の殺人』は好きな作品で、『誰も知らない』『海よりもまだ深く』ちょっとのれなかった作品です。今作については『海街』『三度目』ほどではないですが、好きな作品でした。
キャストを見た時点でわかっていたことではありますが、全員演技が上手い。特に安藤サクラが素晴らしかったと思います。予告編を観た時点である程度結末の見える話ではあるのですが、それを飽きさせないのは子役二人を含めた演技の良さにあるように思います。
そして多分こんなに直接的に松岡茉優のおっぱいにフォーカスを当てる作品はもう二度とないでしょう(笑)。リリー・フランキーのセリフに同意せざるを得ません。“男はみんなおっぱいが好きだ”。
この家族が暮らす家の美術がとても良いですね。『海よりもまだ深く』でも感じたことですが、経済的な貧しさは伝わるけど不衛生な感じはしないというバランスに仕上がっています。
それからなんと言っても食事の描写です。この家族の楽しそうな感じは会話のテンポ感とこの食事に表現されている気がします。高価なものを食べているわけではないけど、コロッケ、うどん、おふ、そうめん、とうもろこし、唐揚げ、駄菓子といろんな種類のものをおいしそうに食べるのが良かったです。
*ここからネタバレです
◆ネタバレ
初枝が突然死してしまい、治と信代は床下に穴を掘って彼女の遺体を埋める。初枝のへそくりを悪びれもせずに使う治と信代を見て、祥太の中で、自分の出自も含めて、他の人のものを奪うことへの疑問が膨れ上がってくる。
ある日いつものスーパーへりんを連れてきた祥太は、りんが自分の指示に従わずに万引きをしようとする姿を見て、それを止めさせるために強引な万引きをしてけがをして捕まってしまう。
祥太の入院によって、自分たちの素性が露見することを恐れた治たちは夜逃げをしようとするが、その現場を抑えられてしまう。りんは元の家族のところに戻され、祥太は児童養護施設に入る。信代は初枝の死体遺棄の罪を一人で負って服役し、治は一人でアパートで暮らすことになる。
留置場に面会に来た祥太に、信代は彼を元の家族から盗んだときの事を話す。その晩、治も祥太に“父ちゃんおじさんに戻るよ”と声をかける。翌朝祥太は治に自分が捕まった日、本当はわざと捕まったことを告白しバスに乗って去っていく。
◆感想(ネタバレあり)
劇中で祥太が『スイミー』の話をしますが、この家族の在り方が『スイミー』に重なるようになっています。スイミーは小さな魚たちが大きなマグロに食べられないようにするため、寄り集まって大きな魚のふりをする話です。本当の血縁のある家族に愛されなかった過去を持つ社会的には弱者である人たちが、それぞれの孤独に立ち向かうため、家族のふりをしている話です。
でも実は血縁のあるいわゆる本当の家族だって、精神的な安らぎを求めて最初は他人同士だった人が一緒にくらすところから始まるのだから、実は本質的にはこの家族と大差はないのかもしれません。
この家族は祥太が捕まったことで離散を迎えます。上にも載せた公式サイトのあらすじには祥太は“家業”に疑問を持つようになった、となっていますが、祥大が疑問に思ったのはそれだけではない気がするのです。祥大はゆりがりんと名前を変えなくてはいけなくなる場面で「我慢できるよな?」と尋ねるのです。逆に言えば素性を偽って生きることに祥大本人はずっと何かを我慢していたのではないかと思います。それが何かと言えば、この家族以外の外の世界を体験することだったのではないかと思います。物語のわりと序盤で祥大は自分と同年代の子供達が歩いているのを気になる様子でちらちらと見るシーンがあります。その一方で、足を怪我した治が職場の同僚に連れられて帰ってきたときにはすばやく自分の身を隠していて、自分がこの家族といる限り外の世界と関わることに無理があること彼にはわかっていたのでしょう。クライマックスの展開は外の世界からこの家族に辿り着いた側である治と信代の立場と、この家族しか知らずこれから外へ出ていく祥大との差が生んでしまう結末のように思います。
ただ、この結末もいずれ別離を迎える本当の親子の関係性と本質的には変わらないことのように思います。治と信代はついに祥大から「お父さん」「お母さん」と呼んでもらえなかったことに寂しげな様子を見せますが、実はこの祥大との別れこそ、本当の親子らしさのように思うのです。
まあ、ちょっと気になるのは最後にりんが本当の家族のもとに戻されちゃうことですかね。一度児童相談所が通報している家族のところにそんな簡単に戻っちゃうものなのか疑問に思います。
特撮関連のことに少し触れると2011年に『ゴーカイジャー』でジョーを演じた山田裕貴がりんの実父の役で出ています。出演シーンはわずかですが、順調にキャリアが積めているようで良かったなと思いました。
◆まとめ
・「家族や親子の本質とは何か」という話に思えました
・役者さんの演技が(是枝作品ではいつもそうですが)素晴らしい
・食べ物がおいしそうなのが良い