「『石橋湛山全集』 約40年ぶり復刊」:値段がまるで『action52』のようだ | 灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし

「『石橋湛山全集』 約40年ぶり復刊」:値段がまるで『action52』のようだ

来月に待望のロールズ『正義論』新訳版が上梓ということで、読み進めるにしたがいその類まれなる悪文ゆえに中毒的な症状を喚起すると、もはやカルトな人気すら博していると噂の矢次鈞次訳『正義論』が古書店から駆逐されることは間違いないだろう。少なくとも古書価が急落することは間違いない。

またしても来月3月以降と大幅な延期になったようだが、新歴史主義の基本書であるヘイドン・ホワイト『メタヒストリー』(Hayden V. White, Metahistory: The Historical Imagination in Nineteenth-Century Europe)発売も控え、何かと書籍に金を投下しそうな今日この頃といえる。

ところで話は『石橋湛山全集』復刻の件である。

健康状態悪化のため首相の座を降りたという話がなぜか美談にとして大いに語られているが、やはり湛山は「分」をわきまえた「立国」を貫き、転生した福沢諭吉と見まちごうばかりの論陣を張りつづけた点にこそ魅力があるわけで、『その時歴史が動いた』のようなお話はどうでもよい。

ならばその全容を掴むための全集が復刻とは真に慶賀すべき事態といえるはずなのだが、目を疑うのはその値段である。

1冊21,000円也。全16巻揃33万6千円である。


いわせてくれ。誰が買うんだよ、こんな値段で。

そりゃ199ドルだった『Action52』に比べれば中身があるだけ遥かにマシだが、それにしたって装丁が変わったくらいで中身は同じじゃないか。ならば旧版を15冊揃5万前後で買い、新発見原稿が収録された最終巻を買い足せばいい。ここまで値段を吊り上げないと採算が取れないのか? 『石橋湛山全集』ってのは。

単純に見て物価は当時の4倍か5倍になっているらしいので、1万円くらいで収まってもよさそうなものだ。

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石橋湛山全集 約40年ぶり復刊
女性解放論者の横顔も
 首相、ジャーナリストとして戦後史に足跡を残した石橋湛山(1884~1973年)の全集が、約40年ぶりに東洋経済新報社から復刊される。全15巻に加え、女性の社会進出を訴えた新発見論文などを集めた補巻(第16巻)も刊行、先進的女性解放論者としての横顔を伝える。

 湛山といえば、戦前期から植民地拡大路線を批判し、「小日本主義」を提唱した自由主義思想家。前回刊行後も多くの論考が見つかり、同社は「日本の経済、外交問題解決のための貴重な史料になる」と復刊を決めた。

 その湛山が、良妻賢母を旨とする女子教育が主流だった明治・大正期に、女性の自立を促す政策の必要性を熱心に主張したことは、これまであまり知られてこなかった。

 補巻収録の評論「近代に於(お)ける婦人問題の中核」(1913年)では、明治維新で封建的身分制が崩壊した結果、激しい自由競争の時代が到来したことを指摘。この時期、結婚者数が減少したことを、生活苦に悩む男性が増えたためであると分析し、〈男に頼らず、女も自分で自分の口過ごしをせねばならぬ時勢になって来た〉と力説している。経済格差や就職・結婚難が社会問題となっている現在にもあてはまりそうなのが興味深い。

 前回から編集に携わる石橋湛山記念財団評議員の山口正さん(76)は、「社会の実態から問題提起する姿勢は、プラグマティズムを信奉していた湛山ならでは」とし、湛山の妻、うめが小学校教員で“共働き夫婦”の先駆けだったことから、「働く女性に対して理解があったのかもしれない」と語る。

 補巻には、湛山が女性向けに経済、国際情勢をつづった「婦人公論」「婦人之友」などのエッセーも多く収められている。全集は各巻2万1000円(税込み)、今月から順次刊行を開始し、補巻は来年6月に出版予定。

(2010年10月4日 読売新聞)
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(http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20101004-OYT8T00616.htm)