マンションをめぐる殺人です:西村京太郎『マンション殺人』

西村 京太郎
『マンション殺人』(徳間文庫)
マンションのモデルルームで発見された撲殺死体。容疑はその場に居合わせた人間とあいなるわけだが、彼らも次々と殺害されてゆく…といった食指のかけらも動かない一編。
西村京太郎がつねに歴史や社会問題への関心を抱いていたのは、初期作品を読めばそれこそ瞭然なのだが、本書も一応は卑俗な意味で社会派というべきだろう。
本書の背景にも、公団住宅と土地及びマンションに関わる戦後日本の歪みが横たわっているのだが、そういったものを告発する以上のものがあるわけでもなく、探小的には微妙。
本書初版を出版した青樹社は、1970年代にこういったサラリーマンを狙った社会派テイストの軽本格を続々と書かせていたというイメージがある。たとえば初期の森村誠一を強力に後押ししたのはここだが、それでも青樹社から出版されたものには森村のかの飽くの強い本格趣味は実に薄かったように記憶している。
もちろん、サラリーマンが電車などで何の気なしに読む分にはこういったリアルかつストーリーで読ませる作品の方が向いているかもしれないが、だからといって作品の質を落としていいわけではない。とりあえず、本書は駄作である。
初版:1971・12 青樹社
★★☆☆☆