1/5鑑賞

 

劇団四季「ひばり」を最初に鑑賞した時、歴史的背景や異端審問(宗教裁判?)等よく分からない点があった。


そのため1/6に2回目を観る前に色々調べておこうと思い、その一環として1/5夜に実家から帰ってすぐに本作を鑑賞した。

 

本作は公開時と、それから10年後位に観た記憶があって、今回が3回目。

 

ミラ・ジョボビッチの迫真の演技がただただすごい。特に収監されている時、神なのか悪魔なのか、それとも自身の声なのか?正体不明な存在と対話しているシーンがかなり心にきた。

 

本作ではジャンヌが主観的でなく客観的に描かれている。

 

だから、自分にしか聞こえない神や天使の声にのみ従って他人の言うことを一切聞かなかったり、やたら攻撃的だったり、急に激高したり、戦うこと=イギリス人に復讐することに憑りつかれているようだったり、かと思いきや殺戮が行われていることに涙したりと、精神が安定していない印象がものすごく強い。

 

自分にしか聞こえないお告げにこだわる=選民意識が強く、非常に傲慢とも思えるその態度には、狂気すら感じられた。

 

ジャンヌが聞いたお告げの真実は、誰にも知る由はない。しかし、ジャンヌのその短い生涯で成し遂げた史実があまりにも奇跡的であることは事実。

 

また当時の政治情勢に都合良く利用された悲劇だけでなく、収監されてからの絶望や怒りや悲しみや恐怖は絶大なものだったろうに、結果的に自身の命よりも敬虔さを重んじ、そのような自分であることを信念とする強い在り方には心が強く打たれる。

 

そして、当時ジャンヌを切り捨てたシャルル7世が、ジャンヌの死から約20年後に裁判の見直しを命じてその処刑判決が無効となっただけでなく、約500年後には正式に聖人と認められたという事実に、人々のジャンヌへの思いを感じとることが出来る。

 

また、本作でも「ひばり」でも丁寧に描かれていた、ジャンヌを裁く側の葛藤や苦悩。人間が生きていく上での、様々なしがらみと感情との兼ね合いの難しさたるや。

 

だからこそ、常軌を逸しているとも思える強い信念を持つジャンヌのような人物に、人々は惹きつけられるのだろうなぁと感じた作品だった。

 

でも、本作を観てひとつ気になったのは、ジャンヌの人物像をこのように描いたことに対する評価について。

 

私はキリスト教の概念に知識や興味はあっても信念は無いから「なるほど~そういう見方も出来るよな」とすんなり受け入れられた。

 

だけど、ジャンヌを神聖視している方達や英雄視しているフランスの方達はどう感じたのかな?と気になった。批判の声も少なくなかったんじゃないかなぁと感じた。

 

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せっかくだから、ジャンヌの生涯を記して終える。

 

1412年 0歳:

1月:フランスの農村地にて生誕

 

1425年 13歳:

夏:初めて神の声を聞く

 

1428年 16歳:

5月:ボードリクール(ヴォークルールの隊長)を訪ね、シャルル7世に謁見するための支援を乞う

 

1429年 17歳:

2月:男子服・馬を手に入れ、6名の護衛と共にシャルル7世がいるシノンに向け出立

 

3月:シノン城に入城・シャルル7世に謁見


4月:イギリス軍に包囲されたオルレアンに入城し、サン・ルー砦を奪回

 

5月:レ・トゥーレル要塞を奪回し(この際、予言通り胸の上に矢傷を受ける)、オルレアン解放

 

6月:シャルル7世の戴冠式のため、遠征軍と共にオルレアンを出発

 

7月:ランス奪回

 

7月:ランス大聖堂にてシャルル7世の戴冠式を挙行

 

9月:パリ奪還を目指しサン=トレノ門を攻撃するも失敗、負傷

 

1430年 18歳:

5月:コンピエーニュの解放戦で、敵方ブルゴーニュ軍(イギリス側)の捕虜となる

 

11月:ブルゴーニュ軍よりイギリスに金銭と引き換えに引き渡され、ルーアンに移送、ブーヴルイユ城に収監

 

1431年 19歳:

1月:異端裁判開始

 

5月:改悛の誓いを行い、牢内で婦人服を着用

 

5月:その3日後、再び男子服を着用

 

5月:その1日後、異端再犯によりコーションより尋問を受ける

 

5月:その2日後、最終判決が下され、火刑執行

 

1450年2月:

100年戦争が終結し、シャルル7世がジャンヌの裁判の見直しを命令

 

1456年7月:

名誉回復裁判で、ジャンヌの処刑判決の無効が宣言される

 

1909年4月:

その約456年後、ローマ法王ピウス10世がジャンヌを列福(聖人に次ぐ福者)

 

1920年5月:

その約11年後、ローマ法王ベネディクトゥス15世がジャンヌを聖女(聖人)に列する

(おまけ)

1953年:ジャン・アヌイ「ひばり」を発表

1957年:劇団四季「ひばり」を初演