ヨガといわずにヨーガというように現在のヨーガ教室の先生はいっている。
ヨーガインストラクターはいろいろと大変なのだ。
日本でのヨーガ人口は400から600万人ともいわれるとか。
 女性が多いようだ。
 私もヨーガ教室にいってはいるが
体の柔軟性がないので困っている。
腰も痛いし足首もねんざの跡が正座できないことに繋がっている。
できる範囲でやることにしている。
こんな記事を見つけた。

「生徒よりも講師募集のほうが人が集まる」ヨガインストラクターの労働実態 #生活危機

日本のヨガ人口は、400万人とも600万人とも言われる。リラックスできるフィットネスとして人気が高い。そんなヨガ業界を支えているのは、フリーランスのインストラクターたちだ。日本ではヨガ経験者に女性が多く、インストラクターも大半が女性。華やかな職業に見えるが、資格を取っても働き口が見つからない、不利な条件で働かざるを得ないなどの問題が生じているという。取材をすると、業界特有の実態が見えてきた。(取材・文:インストラクターが余っている

「資格を取ってみたものの、仕事につなげるのにこれほど壁があるとは想定外でした」

こう話すのは、東京・茅場町にある「SVAHA YOGA(スヴァーハ・ヨガ)」でインストラクターをするあさみさん(30代)だ。本業は会社員で、平日夜のクラスを受け持つ。

あさみさんは2022年5月に「RYT200」というヨガの資格を取った。RYT(Registered Yoga Teacher)は、全米ヨガアライアンスが認定する民間資格で、アライアンスが認定するスクールで一定のプログラムを修了した人に与えられる。

資格取得は趣味の延長だったが、せっかくなら学んだことを生かしたいと思ってインストラクター募集を探した。しかし、未経験のあさみさんが応募できる求人はなかなか見つからなかった。

ヨガインストラクターの仕事を得るには、各スタジオが実施する“オーディション”を受けて、通過したら契約を結ぶのが一般的だ。オーディションは狭き門で、「通過率は1~2割」と推定する人もいる。応募条件としてスタジオなどで教えた経験を求められることも多い。

そんななか、唯一未経験者に門戸を開いていたのが「SVAHA YOGA」だった。オーナーの津野千枝さんは、Instagramでインターンを募集した時のことをこう振り返る。

「生徒募集には反応が薄いのに、未経験可でインターンを募集したら18件くらい応募がありました。予想以上の反響だったので、途中で締め切ったほどでした」

2023年1月にオープンしたSVAHA YOGAは、日当たりのいいビルのワンフロアにひとクラス最大6人ほどという、こぢんまりとしたスタジオだ。


津野さんがインターンを募集した理由の一つに、何十万円もかけてRYTを取ったのに働き口がないという相談を、数人から受けていたことがあった。

「ヨガのレッスンの受講料は1人1回3000円程度で、この20年間変わっていません。一方で、インストラクターを養成するティーチャートレーニング(TT)は、1人契約すれば数十万円(の受講料収入)が保証される。スタジオとしてはTTをやったほうが効率がいいので、資格対応トレーニングを行うスタジオがどんどん増えて、求人に対して先生が増えすぎてしまった。ヨガ業界そのものが“資格ビジネス”で成り立ってしまっているところがあります」

コロナ禍を受けて、オンラインで完結するコースも登場した。あさみさんもRYT200を完全オンラインで取得した。授業のツールにはLINEを使う。送られてきた手本の動画を見て、自分のポーズの動画を送り、講師にフィードバックをもらう。座学・レポートと実技を合わせて合計200時間、半年かかった。費用は18万円だった。

津野さんは、今のヨガ業界は“ジリ貧”状態だと考えている。

「10年ぐらい前のウォール・ストリート・ジャーナルで、アメリカのRYT200取得者と新規にヨガを始める人の数が逆転したという記事を読んで、『この業界はこのままではまずい』と感じました。資格ビジネスが一概に悪だとは言いませんが、雇用先もないのに安易に先生を作りだしてマネタイズする方法はいずれ行き詰まるのではないかと思います」

フリーランスゆえの立場の弱さと、企業の経済活動の自由

「ヨガインストラクターは大半がフリーですが、フリーランスは立場が弱い。例えば報酬にしてもこの20年下がり続けていて、バブル期には1レッスン1万円だったようですが、今は3000円から5000円くらい。専業で食べていくのは簡単ではありません。にもかかわらず、団結して問題を訴える文化がない」

こう話すのは、フリーヨガインストラクター歴20年以上のベテラン・塙律子さん。

塙さんは、現在、ヨガ・ピラティススタジオ「スタジオ・ヨギー」を展開する株式会社ヨギーと、不当労働行為をめぐって中央労働委員会で争っている。

2004年に創業したヨギーは、日本におけるヨガブームを牽引してきた企業の一つだ。レッスンを提供するスタジオと、ヨガインストラクター養成校を展開しており、東京を中心に全国に14店舗がある。2024年2月現在、約250人のインストラクターが在籍し、ヨガインストラクターはこのうち約150人。そのほとんどが業務委託契約となる。

塙さんがヨギーと契約したのは2005年。その後、1年ごとに更新してきた。

「体だけでなく、心にもアプローチするヨギーの哲学に惚れ込み、やりがいを持ってクラスを担当してきました」

そんな塙さんだったが、2018年にヨギーから送られてきたメールを見て、経営方針に疑問を持った。メールには、「ヨギー・インスティテュート認定資格(YIC)」を有料で取得しなければ、「ヨギーヨガ」というクラスを担当できなくなる旨が書かれていた。

ヨギーヨガは、ヨギーが体系化したオリジナルプログラムのこと。ポーズ、呼吸法、瞑想などに分かれていて、スタジオで開催しているクラスの5割程度を占める。

YICは、ヨギーが2015年にスタートした独自の認定資格だ。それまでの公認ヨガインストラクター資格制度をリニューアルしたものとなるという。

2018年に通告があるまでは、YICを持っていないインストラクターも、無料の研修を受けることでこれらのクラスを担当してきた。

新たに資格を取得・更新するには、毎年自費で研修を受けて所定の「ポイント」を取得し、1年ごとに更新手数料を支払う必要がある。塙さんによれば、年間8000~5万円程度かかる計算だという。


「これは、有料講習の実質的な義務化です。本来、業務委託である私たちインストラクターにこのようなことを課してくるのはおかしい。それに、留学するなどさまざまな形でヨガの研鑽は積んでいます。講習の意義を感じなかった」

一方、ヨギーの代表取締役副社長の清水圭さんはこう説明する。

「YICは、現代人が安全かつ効果的にできるよう体系化したヨギーヨガのクオリティーを維持し、アップデートするための認定制度です。取得は完全に任意で、認定者ではないヨガインストラクターは、ヨギーヨガ以外のアシュタンガやシヴァナンダといった流派のクラスを担当されています。それまでヨギーでインストラクターをしてきた認定資格取得希望者には複数回の無料の研修が提供されていますし、取得のハードルは低かったものと考えています」

YICを取得すれば、ヨギーヨガをスタジオヨギー以外でも教えることができるようになる。一般の人がYICを取得しようとすれば、数十万円以上の受講料が必要だ。認定試験に合格したあとも、「ポイント」を取得し、1年ごとに更新料を支払い、資格を更新していく。

認定資格を保有しているヨギーのインストラクターの場合は、更新に必要な「ポイント」や手数料は、そうでない人と比べて低く設定されている。

独自の認定資格を作った理由について清水さんは言う。

「それぞれの人生がある中で、自分と向き合ったりまわりとのつながりを大切にしたりするツールとして、ヨガやその価値観を広めたいというのが会社を立ち上げた動機。それを実現するための一つの方法として、インストラクターが経済的にも成り立つようにし、職業として確立したいという思いが認定資格の設立につながっています」

納得がいかなかった塙さんは、2019年4月に仲間のインストラクターとともに「yoggy インストラクターユニオン」を結成し、団体交渉をスタートした。しかし2020年になりコロナ禍が訪れ、スタジオの休業とともに交渉は中断した。6月には営業再開したが、ユニオンの幹部4名がそれぞれ週4~5回のペースで担当していたクラスがすべてなくなった。

塙さんたちは、ヨギーのこの対応について、労働組合活動をしていることを理由に不利益を被らせる「不当労働行為」に当たる可能性があるとして、2020年7月、東京都労働委員会に救済の申し立てを行った。そして、2023年6月、東京都労働委員会は、なくなった担当クラスの一部を復活、その期間で得たはずの報酬の支払い、そして全店舗に謝罪文を掲載することを内容とする一部救済命令を出した。

ただし、ヨギーが削除した幹部たちの担当クラスのうち、ヨギーヨガについては、当初ヨギーが予告したとおり、認定資格取得者以外にヨギーヨガを担当させない方針を実行しただけだということで、不当労働行為に当たらないと判断された。

この結果について塙さんはこう話す。

「認定資格について改善を求めたユニオンの意義を否定する命令は残念でした。ただ、フリーランスで結成した労働組合が認められたことは自信にもなりましたし、一部とはいえ救済命令の内容は嬉しかったので、ここで終わりにしようと思っていました」


しかし、ヨギー側がこの命令に対して再審査を申し立てた。それを受け、塙さんたちもヨギーヨガクラスの復活も含めた救済を求め、再審査を申し立てた。

背景にあるのは、女性へのバイアス?

ユニオンとヨギーの一件は、多くのヨガインストラクターの関心を集めた。前出の津野さんは、ヨガ業界の労働問題の背景には、市場原理だけでないバイアスがあるのではないかと指摘する。

「インストラクターの多くは女性である一方、インストラクターを管理するマネジメント職や、スタジオの経営者には男性が多い。そこで、女性はどうせ結婚するから報酬は抑えていい、お稽古の延長で資格をあげて、それで稼げなくても問題ない、という古い価値観があるのではないでしょうか。さらに、この業界に特有のことかもしれませんが、『神聖なヨガでお金をもらうのは申し訳ない』『お金よりやりがい』と考える人も少なくありません」

ヨガには特有の哲学があり、その思想に惚れ込んでいるインストラクターは多い。前出のあさみさんもその一人だ。

「子どもの頃から、“正解”に近づく教育を受けてきた中で、正解・不正解ではなく、そこにたどり着くまでの過程が大事なんだと教えてくれた」

津野さんは言う。

「ヨガ業界は今、こうした事情に甘えた構造が回らなくなり始めている。マネタイズのあり方を考え直さないといけない時期にきているのではないでしょうか」

ヨガ講師は肉体労働「女性の身体への配慮を」

経営者とインストラクター両方の視点から、ヨガ業界の働き方に問題意識を持っているのが、東京・用賀のヨガスタジオ「COCOYOGA」を経営する吉田なるさんだ。

吉田さんは、大学在学中からフリーのインストラクターとして活躍し、卒業後に専業となった。その1年後の2016年に「COCOYOGA」を立ち上げた。

「ヨガインストラクターは人気商売。人が増えて競争が激しくなるのは仕方がない。それによって質が上がるのは、お客さんにもメリットがある。とはいえ、やりたい人がたくさんいるからといって待遇を悪くすることは客もインストラクターも幸せにしない。価値を創出している現場のインストラクターには見合ったリターンを出すべきです」

今のヨガ業界は女性が多いにもかかわらず、女性が働きやすい環境になっていないと指摘する。

「肉体労働なのに、女性の健康への配慮が十分ではありません。例えば、ホットヨガで汗だくになった後に、受付に立たせてお客さんとトークをさせる。30分もしゃべっていたら、体が冷え切ってしまいます。あるいは、生理中でもそうでない時と同じように、体に負担がかかるプログラムを教えなければいけない。妊活をしながら無理をして続けている人も多いです。それだけ無理をしてしまうのは、自分の代わりはいくらでもいるという恐怖心からだと思います」

中でも警鐘を鳴らすのがホットヨガだ。吉田さんは、フリーランス時代にホットヨガを教えていたことが原因で「耳管開放症」になった。


「医師には、日常生活ではあり得ない環境で強制的に発汗したことが原因で、耳管が閉じなくなったのだと言われました。それをSNSで発信したら、『実は自分も』と、6、7人からメッセージをもらいました。それ以外の不調があったという人を入れたら13、14人。そういったリスクがあることがインストラクターにも利用客にも周知されていないんです。非常に闇が深いと思います」

配慮されていないのは身体面だけではないという。

「フリーならば産後、自由に仕事に復帰できそうにも感じますが、復帰しない先生が多いんです。休みを取るのが難しく、働きづらいからだと思います」

スタジオによっては、フリーのインストラクターが休講する際、インストラクター自身が代行講師を用意しなければならないところもある。代行費用を一部負担する場合もある。そうでなくても、「休む時は3日前までに申請が必要」などの決まりがあり、ハードルが高い。

吉田さんのスタジオでは、小さい子どもがいるインストラクターは、2人組でレッスンを担当してもらっている。2人の合意があればどちらが担当してもよく、会社の許可は必要ない。生理の時は、体に負担が少ないレッスン内容に変更することもできる。

COCOYOGAには、20代後半を中心に15名のインストラクターが在籍している。9名が稼働しており、6名は妊娠出産で休業中だという。

「替えがいるならば、それを逆手にとって、誰かが働けない時は誰かが代わってあげられる仕組みを作ればいいじゃないですか。それで、みんなハッピーになると思いますよ。女性が働きやすい社会を作るには、まだまだ工夫できることがあるはずですよね」

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