昨日、3月13日に和歌山県の串本町から打ち上げられたカイロス、スペースワン社が打ち上げ直後に爆発。失敗した。
残ねん
民間のロケットでは打ち上げが成功すれば初めてとなるとか。
カイロスは、固体燃料の3段式ロケットで全長約18メートル、重量約23トン。地球低軌道には250キロ、太陽同期軌道には150キロの衛星を投入できるとしている。

打ち上げ数秒後に「ドーン」 カイロス爆発で白煙と炎、静まる見物客
 宇宙ベンチャー「スペースワン」(東京)が打ち上げに臨んだ小型ロケット「カイロス」初号機は、わずかに上昇した直後に爆発した。
 カイロスは13日午前11時1分ごろ、予定時刻通りにリフトオフ(離昇)。だが、数秒後に爆発し、機体全体が白い煙に包まれた。機体の一部は和歌山県串本町の発射場周辺の山林に落下したとみられ、黒煙とともに炎が上がっていた。

 同社が同県那智勝浦町内に用意し、発射場の映像を流していた会見場では、担当者があぜんとした状態で爆発の様子を見ていた。同社は同日午後、会見で説明する予定。

 発射場から約2キロの田原海水浴場の見学場にいた記者(46)は、詰めかけた見物客とともに発射の瞬間を待った。ロケットが打ち上がったと思われる音がした直後、「ドーン」という轟音(ごうおん)が数秒ほど響いてから、山裾から白煙があがっていくのが見えた。

 町役場の職員が、打ち上げが失敗したとアナウンスすると、会場は静まりかえった。

 串本町の会社員市原千秋さん(34)は「今回は残念だが、初号機なので打ち上がればラッキーだと思っていた。ロケット打ち上げは地元民の悲願。次回のチャレンジに期待したい」と話した。

 田原海水浴場で見学した大阪府和泉市の末吉正晴さん(64)は「しょうがない」とつぶやいた。「残念な気持ちしかないが、そういうこともある。次も必ず期待して来ます」と語った、

 約25分後、海水浴場には「カイロス初号機は予定通り打ち上がりましたが、残念ながら失敗という結果になりました」とのアナウンスがあった。涙ぐむ女性の姿もあった。

■和歌山知事「失敗は付加価値」「県としてもサポート」

 県庁で取材に応じた岸本周平知事は、人的被害は確認されていないとしたうえで、今後も同社への支援を続ける姿勢を強調した。

 「発射され、5秒くらい上がり、たいへんうれしく思った」。岸本知事はこう切り出すと、爆発について「ロケットが不具合を感知して中断の措置を自らとった。コントロールされない中での爆発ではなく、その点は安堵(あんど)している」とした。

 そのうえで、「初めての挑戦なので、いろいろなことが起きると思う。最初からうまくいくばかりではない。失敗は付加価値だと思っている」と捉え、「いろんなプラスの点もあった。そのことを糧に、次回必ず成功していただくように、万全の体勢でお願いしたい。県としてもできる限りのサポートをしたい」と語った。

■串本町長「町としてバックアップ」「必ずや打開できる」

 発射場近くの田原海水浴場の見学場にいた串本町の田嶋勝正町長は報道陣に対し、「きょうの日を楽しみにしていたから残念です。まさかこういった結果になるとは思っていませんでした」と切り出した後、「ただ町としたら、ロケットと一体となったまちづくりをしていくと決めましたから。必ずスペースワンをバックアップして、一日も早く初号機が打ち上がるように協力したい」と語った。

 スペースワン関係者へのねぎらいの言葉を述べるとともに、「残念な結果になったが、必ずやこの状況は打開できると思っている」と改めて期待をにじませた。(伊藤秀樹)

民間企業スペースワン社が開発した小型ロケット「カイロス」が13日午前11時過ぎ、和歌山・串本町の発射場から打ち上げられたが、数秒後に空中で爆発した。

スペースワン社は13日午後2時から会見し、豊田正和社長は「結果を前向きに捉えて次の挑戦にのぞみたい」と述べ、原因究明を進めて、打ち上げを再開するとの決意を明かした。

豊田社長は会見の冒頭で、「衛星を託して下さったお客様、法整備など様々なご支援していただいた国会議員の皆様、そしてこれまで温かくご支援してくださった知事や地元関係者の皆様の期待に十分応えられなかったことを深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

また爆発については、「リフトオフ(発射)から約5秒後に飛行中断措置がとられた」と説明。ミッション4のステップ1のリフトオフまで進んだが、ステップ2の「1段分離・2段点火」の段階でミッションの達成が困難と判断して飛行中断を行ったという。

原因については対策本部を立ち上げて調査中としていて、「一刻も早く原因を究明し再発防止に努めたい」としている。

その上で、「打ち上げを再開し、打ち上げサービスの実現により、宇宙サービスのさらなる拡大に貢献したい。挑戦を続けて全てのミッションを達成することこそが本当の意味での地元への貢献だと思います」と述べ、引き続いての支援や応援を求めた。

また、ロケットの破片は敷地内に落下し、火災も鎮火したとして第三者の被害は起きなかったと明らかにし、「安全な飛行中断をすることができた」と評価している。

スペースワン社は、ロケット「カイロス」を開発し、発射場「スペースポート紀伊」を運営する会社で、キヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行などが出資している。

設立は2018年7月で、小型衛星用の宇宙輸送システムの開発、宇宙輸送サービスの事業化を目指している。
カイロスは、固体燃料の3段式ロケットで全長約18メートル、重量約23トン。地球低軌道には250キロ、太陽同期軌道には150キロの衛星を投入できるとしている。