【松竹梅】

松竹梅というのは、古来よりまことにめでたいものと言うことで、慶事(お祝い事)に使われます。
松と竹は葉が枯れない、梅は冬でも花を咲かせるという訳で、「厳寒の三友」という言葉もあります。
鰻屋で長く待たされるのを「待つ(松)だけ(竹)うめ(梅)え」なんていう洒落にもなっています。
ところが、落語の「鰻の幇間」のように「まづい(松 )たけぇ(竹)うめくねぇ(梅)」松竹梅もあるようで。
まぁいずれにしても、この3つがセットになって、色々な場で重宝がられているようですが。

長屋の松五郎、梅吉、竹蔵の三人組。

そろって名前がおめでたいというので、出入り先のお店のお嬢さまの婚礼に招かれた。

ところがこの三人、名前だけでなく、心持ちもおめでたいので、席上どうしたらいいか、隠居に相談に行く。

隠居は、ついでなら鯨飲馬食してくるだけが能でないから、何か余興をやってあげたらどうかと勧め、「なったあ、なったあ、蛇(じゃ)になった、当家の婿殿蛇になった、何の蛇になあられた、長者になぁられた」という言い立てを謡(うたい)の調子で割りゼリフで言えばいいと、教えてくれる。

終わりに「お開きにいたしましょう」と締めるというわけ。

いざ練習してみると、松五郎は「な、な、納豆」「豆腐ーい」
と全部物売りになってしまうし、竹蔵は竹蔵で
「デデンデデン、なあんのおおおう」と義太夫調子。

危なっかしいが、道々練習しながらお店に着く。

いきなり「まことにご愁傷さま」とやりかけて肝を冷やすが、だんなは、おめでたい余興と聞いて大喜び。

親戚一同も一斉に手をたたくものだから、三人、あがってボーッとなる。

それでも、松と竹はどうやら無事に切り抜けたが、梅吉が

「長者になられた」を忘れ、「風邪……いや番茶……大蛇……」
と、とんでもないことを言いだし、その都度やり直し。

最後に「なんの蛇になあられた」「亡者になあられた」

……これで座はメチャクチャ。

三人が隠居に報告に来て「これこれで、開き損なっちまいまして」

「ふーん、えらいことを言ったな。それで梅さんはどうしてる」
「決まり悪そうにグルグル回って、床の間に飛び込んで、隅の方で小さくなってしおれてました」
「ああ、それは心配ない。梅さんのことだ、今ごろは一人で開いて(帰って)いるだろう」

・・・落語ですよね。