【紺屋高尾】

「売れっ子花魁の身請け」とかけて

「ピンチの時のリリーフ」と解く

その心は「久蔵(急造)では不可能です」

「久蔵と夫婦になった吉原の売れっ子太夫」とかけて

「アフター5で先輩に奢ってもらおうとするせこい後輩」と解く

その心は「紺屋高尾(今夜たかろう)」

「久蔵が働いている店」とかけて

「真言宗の有名なお寺」と解く

その心は「高野山(紺屋さん)です」

似ている「紺屋高尾」と「幾代餅」を比較しました。

紺屋高尾・幾代餅】

「一途で貧乏な客の女房になる2人の売れっ子花魁」とかけて

「郊外へピクニックに誘われた」と解く

その心は「高尾(高尾山)へ幾代(行くよ)」

神田紺屋町の染め物職人の久蔵。

親方のところに11歳から奉公して、今年で26歳になるが、いまだに遊びひとつ知らず、まじめ一途の男。

その久蔵がこの間から患って寝ついているので、親方の吉兵衛は心配して、出入りの、お玉が池の竹内蘭石という医者に診てもらうことにした。

この先生、腕の方は藪だが、遊び込んでいて、なかなか粋な人物。

蘭石先生、久蔵の顔を見るなり
「恋患いをしているな。相手は今吉原で全盛の三浦屋の高尾太夫だろう。」

ズバリと見抜かれたので、久蔵は仰天。

これは、高尾が花魁道中している錦絵を涎を垂らして眺めているのだから、誰にでもわかること。

久蔵は、「この間、友達に、初めて吉原の花魁道中を見に連れていかれたのですが、その時、目にした高尾太夫の、この世のものとも思えない美しさに魂を奪われ、それ以来、何を見ても高尾に見えるんです」と告白。

「ああいうのを一生一度でも買ってみたいものですが、相手は大名道具と言われる松の位の太夫、とても無理です」とため息をつくと、
「なに、いくら太夫でも売り物買い物のこと、わしに任せておけば会わせてやるが、初会に座敷に呼ぶだけでも10両かかるぞ」と言う。

久蔵の3年分の給料だ。

それを聞くと、希望が出たのか、久蔵はにわかに元気になった。

それから3年、男の一念で一心不乱に働いた結果たまった金が9両。

これに親方が足し増してくれて、合わせて10両持って、いよいよ夢にまで見た高尾に会いに行くことになったが、いくら金を積んでも紺屋職人では相手にしてくれない。

流山のお大尽ということにして、蘭石先生がその取り巻き。

帯や羽織もみな親方に揃えてもらい、にわか大尽ができあがった。

さて、吉原。

下手なことを口走ると紺屋がバレるから、久蔵、感激を必至で押さえ、先生に言われた通り、なんでも「あいよ、あいよ」

茶屋に掛け合うと、高尾太夫の体が空いていたので、いよいよご対面。

太夫だから個室。

その部屋の豪華さに呆気にとられていると、高尾太夫がしずしずと登場。

傾城座りといい、少し斜めに構えて、煙管で煙草を一服つけると
「お大尽、一服のみなんし」
「へへーっ」

久蔵、思わず平伏。

太夫ともなると、初会では客に肌身は許さないから、今日はこれで終わり。

花魁が型通り「ぬし(主)は、よう来なました。今度はいつ来てくんなます」
と聞くと、久蔵、なにせこれだけで3年分の10両がすっ飛び、今度といったらまた3年後。

その間に高尾が身請けされてしまったら、これが今生の別れだと思うと感極まり、思わず正直に自分の素性や経緯を洗いざらいしゃべってしまう。

ところが、それを聞いて怒るどころか、感激したのは高尾太夫。

「金で源平藤橘四姓の人と枕を交わす卑しい身を、3年も思い詰めてくれるとは、なんと情けのある人か……わちきは来年の2月15日に年季が明けるから、女房にしてくんなますか」
と言われ、久蔵、感激のあまりり泣きだした。

この高尾が紺屋のかみさんとなって繁盛するという、「紺屋高尾」の由来。