【ほうじの茶】

「お茶を淹れていて熱湯で火傷した」とかけて

「幸せの絶頂の時に突然起こった不幸」と解く

その心は「これが本当の"焙じ(好事)魔多し"でしょう」
あまり聴くことのない噺かもしれません。

隠居のところに八つぁんが訪ねてきた。珍しいお茶が手に入ったので来るのを待っていた。インドのお土産で、飲むものではなく見るお茶だという。手順があって、まず、お茶の葉を焙(ほう)じ、温かい内に茶碗の中に入れ、熱い湯を注ぐと、中に面白いものが見えてくる。青いあぶくが消えて覗くと・・・、
 中から梅の木が現れ、紅白の花を付けた。その下で鶯が飛び回って「ホーホケキョ」と鳴いた。まもなく消えて無くなった。無理を承知で、カカアに見せてやりたいと言って一回分を分けてもらった。

 「珍しいものを隠居からもらってきた」、「お金かい」。「お茶の葉だ」、「そんなの家にも有るよ」、「そんなお茶じゃ無いんだ」。そこで、お茶を焙じて茶碗に入れ、上から熱い湯を注いだ。青あぶくが消えて覗くと、木が現れたが柳になった。「柳にツバメというから、木の下を飛んで『ホーホケキョ』と鳴くぞ」、「あーら、いやだ。気持ち悪い」といって奥さんは目を回して倒れてしまった。よく見るとツバメではなく幽霊であった。

 隠居のところに飛んできて文句を言った。「そうか、おかみさんが倒れたか。おかみさんの顔が写ったか」、「そうじゃないんです。その通りにやったら、梅ではなく柳が出てきた」、「いろんな木が出るんだな。柳にツバメ、柳に蛙、どちらが出たか」、「幽霊が出てきて、カカアがぶっ倒れたんだ」、「楽しむものだ、そんな幽霊は出ないのだが、それは男か女か?」、「男の幽霊で、どっかで見たことがある幽霊だと思ったら、3年前に死んだアッシの親父の幽霊だったんだ」、
「解った。それは親父さんの”法事”が足りなかったのだ」。


・・・この噺、圓窓師匠のCDがありますが、熱い湯を注ぐと色々な人が出て来るということで、役者だとか噺家の物まねが入るという、とても難しい噺です。