今回は、これまでに行ってきた意識等の回復を目指した取り組みについてまとめていきます。

急変後、あまりの状況の重篤さ(1病日)、CT検査と予命(9病日)を聞いてショックを受け、1月に入っても、感染の関係で敗血症の診断もされてしまう(15病日)等、厳しい状況が続き、沢山の管につながれた状態でしたから、身体を動かすことも怖く感じ、腕をさすってあげる程度しかできませんでした。

あまり動かすこともできない状態で何ができるか、しかも、脳にダメージがいっている前提で。
インターネットで情報探索をして、聴力は最後まで残るという情報も踏まえ、まず始めたのが音楽療法、オルゴール療法でした。(18病日~)

効果があるとされる72弁のオルゴールは高価でしたが、ありがたいことに私の父と姉が購入してくれました。
ICUに置かせてもらえなかったためICUにいる間は毎日持ち込んだのも思い出で、今でも両親が来たことを知らせる合図として、マッサージを行っている間などに使っています。
また、そうちゃんの好きだった曲や思い出の曲、家族の応援メッセージも加えて作ったCDを持って行き、家族が不在の時にも看護師さんに流してもらえるようにしました。後日、α波が出るというモーツァルトの音源も追加しています。

聴覚への刺激としては意識的な声がけも重要だと感じています。
1月初旬頃に徐脈傾向が続いていて、心拍数が50程度にまで落ち、一時的に(心臓を拍動させる電気信号が)正常な洞調律から接合部調律に変わってしまったことがありました。
脳幹にも重いダメージがあると言われ、状態が進行しているのかもわからなかったので、最悪の事態も脳裏によぎり始めた頃、小学校の担任の先生が、クラスメイトからそうちゃんを応援する手紙を集めてくださり、早速その夜に読み聞かせたところ(22病日)、翌日から、心拍数が改善傾向に変わりました。
その数日前から始めていたオルゴールやCDの効果もあったのかもしれませんが、効果にあやかりたいと思い、何度か私もそうちゃんへ手紙を書いて、読んであげました。

担任の先生からはその後も運動会で使用した楽曲やクラスメイトからの手紙、メッセージ入りの応援歌&ダンス映像なども頂き、本当にありがたかったです。今でもよく聴かせています。

音楽療法では、いわゆるヒーリングミュージックに、DNA・細胞修復に効果のある周波数(528hz)などがあることを知り、MP3プレイヤーに音源を入れたものを持ち込んで、夕方以降、夜間にかかる形にしています。(71病日~)
病院ではDVDプレイヤーを借りられるのですが、DVD-RやDVD-RWで作ったディスクを読み込めず、また、長時間操作不要にしたかったためMP3プレイヤーで編成しました。

容態が安定していくにつれて、積極的な回復に向けた取り組みも増やしていきました。
マッサージは、当初、理学療法士が不定期で巡回して行ってくれていたのですが、そこに同席して、硬直しないよう指関節や腕、足をしっかりと伸縮させる方法を教えてもらいました。(41病日~、肩の脱臼が怖いので、腕は90°まで)
様々な情報から、耳たぶへのマッサージやツボ押しなども追加しています。
紙屋克子氏の本等から得た情報で、頭を立てることが重要と知り、1日1時間程度、車椅子に乗ることを目標とし、その後、HCU病棟に転棟後にバギーに乗車させることで概ね毎日実施できるようになっています。(79病日~)

 

また、早い段階から本やYouTubeで得た知識で、見様見真似でレイキ(手当療法)を始めてみました。(26~84病日頃、147病日~)

こちらは市民権を得ている手法ではないでしょうし、別の記事でご紹介します。

さて、そうちゃんは当初のCT(7病日)で脳浮腫の診断がされていましたが、26病日目におでこに腫脹が出現し、頭頂部にも出現、29病日に脳神経外科医より、頭蓋内圧亢進による可能性の指摘を受けました。
念のため30病日にCT検査を実施すると、その結果、脳浮腫は依然続いているほか、帽状腱膜下膿瘍、骨髄炎、副鼻腔炎、髄膜炎、硬膜下膿瘍の可能性、おでこの隆起部直下には骨破壊、更に加えて肺炎の所見もありました。
この時はかなり辛かったですが、頭蓋内圧亢進の対策として、自分で調べた五苓散(漢方薬)の投薬、30°程度の頭部挙上をお願いしました。

五苓散の使用は、当初、「神経内科の医師に確認したがあまり効果的ではなく通常行っていないとのこと」と回答を受けましたが、他に代替的な頭蓋内圧亢進対策の提示もないので、研究論文などのコピーを見せて試して頂くようお願いし、現在まで処方を継続しています。(30病日~)

その結果、次に撮影したMRI検査(51病日)で、脳浮腫が少し改善されたこと、身体の水分調整機能が向上し、尿崩症で多量の尿が出る時にも、血圧の変化が少ないこと、流石に顔などむくみが出てはいますがある程度でキープできていること等、五苓散の効果を感じています。
五苓散の脳浮腫防止の機序や効果が書かれた論文等はネットで複数、簡単に見つかるためここでは割愛しますが、脳内出血等、内圧が上がる症状があれば適用ありかと思います。

さて、尿崩症の話が出たのでこちらも。正確には中枢性尿崩症と言って、抗利尿ホルモンが正常に分泌されないことで尿量のコントロールができなくなり、尿が出すぎてしまい血圧や電解質に影響してしまうものです。これにはホルモンと同じような作用をするミニリンメルトという薬を投与し、多尿を抑制しています。(12病日~)
また、体温調整ができないため、検査などで軽装になれば体温が35.0℃くらいに下がったり、温風や毛布・布団をしっかりかけて放置すると38.2℃くらいに上がったりしてしまいます。家族が面会できる時間帯は連動しやすい心拍数を参考に体温を測りながら調整します。
あと、最大の懸念である自発呼吸が再開しないこと。
これらについては、やはり脳の脳幹にダメージがあるためであり、不可逆との診断です。が、望みを失ってはいません。

意識障害や脳機能の回復についても調べました。
『生存する意識』(エイドリアン・オーウェン著)が印象的ですが、フアン氏の事例で、自発呼吸はあったようですが非常に深刻な脳障害となった後に、ほとんど日常生活ができるレベルにまで回復し、著者が驚愕していました。
その方のケースでは、120回もの高圧酸素療法を行い、栄養もしっかり管理したというのが奇跡の回復に不可欠だったと思われ、高圧酸素療法を考えました。(47病日頃)
低酸素脳症は適用疾患とされており、回数制限があるものの保険適用が可能です。
しかし、入院している病院に装置(呼吸器を一緒に乗り込める第二種治療装置)がなく(過去はあったそうですが、現在はなくなっていたのは非常に残念)、別の病院に行くには退院しなければならないこと、(フアン氏は90病日以降の実施と推測されましたが)効果が見込めるのはおよそ急性期までとされていて、日本において120回も行うことができるのかといった現実問題もあり、さらに耳抜きができない状態で、中耳炎、蓄膿症、副鼻腔炎の場合は行えないことがあるとの情報も得たことからリスクも感じ、当面見送りました。

また、ほぼ同時期に検討したのが再生医療です。(48病日頃)
しかしこれも、入院している病院ではステミラック注の取り扱いを行っておらず、ミューズ細胞も研究途上、現在進んでいるサンバイオ社のSB623(現在は「アクーゴ」という名称で、承認に向けて継続審議中)も含めて、そもそも今、治験を行ったり突破したものも外傷性を適用条件とするため、低酸素脳症には使えないと理解しています。
となると、クリニックなどで行っている再生医療にリスクも費用も自己負担で飛び込むかどうするか、となりますが、間口を広げていると思われる先に照会しても「退院・自発呼吸・車椅子乗車が必要条件」とのことで、当面見送りました。

 

なお、名古屋近辺にお住まいであれば、電気刺激療法(脊髄後索電気刺激(DCS))を検討することもできると思います。ABR検査で第5波まで反応があれば適用対象らしいのでご参考までに(そうちゃんは第1波すら反応なく適用外)。

大きなハードルを課せられる形で現代医学の限界を見て、辿り着いたのがスピリチュアル・ヒーリング(霊的治療)なのですが、こちらは長くなるので別の記事にまとめますね。

これらの取り組みにより、大きなバイタルの変動もなく、感染もなく経過してきましたが、どうにも慢性副鼻腔炎によるおでこや副鼻腔等の問題を解決させるのが先決であると考え、五苓散の時と同じように排膿や炎症抑止に効果があるという漢方薬を医師に提案し、病院側で検討いただいた結果、点鼻薬(135病日~)と荊芥連翹湯(当初は在庫なく葛根湯)と十全大補湯を処方することとなりました。(137病日~)
167病日に行ったCT検査の結果、鼻腔の貯留が消え、副鼻腔の片側の頬部分の半分近くに空洞が現れ、改善の兆しが見えてきたように思います。

また、ラコールの経管栄養を長く続けていましたが(途中からテゾンを追加)、医師にもう少し栄養をつけさせられないか相談し、病院側で検討いただいた結果、エネーボに変わり、ヤクルトが追加される形になりました。(171病日~)

更に、昔のブログで米国のComa Recovery Associationの論文を踏まえ作成されたという意識障害から回復するためのプログラムを参考に(かなり早期にも見つけていましたが再確認し)、光刺激(1日2~3回の光照射(2秒程度です))、音刺激(録音した応援メッセージをイヤホンから流す)、香刺激(いろんなフレーバー歯磨き粉を購入)を開始しました。(160病日~)


意識を失った人を意識回復させたい、また笑顔を見たいと思って、回復の助けになることがあればできるだけやってあげたいという気持ちで取り組んできました。
副作用の少ない漢方薬が使えるなら、検討・提案してみるのは良いことと思っています。
少しでもステップアップされている方には、別の効果的なリハビリがあるように思いますが、うちのように本当に深刻な状態だとなかなかできることが限られます。何か1つでも参考になることがあればと思います。

他にもこんなことができるのでは、といった情報があれば共有いただければありがたいです。