一年ぶりに降りた南手取駅前は相変わらず閑散としていましたが、それでも少しは変化がありました。
それは新たに不動産屋が開店していたのです。
茂助さんは、その駅前の不動産屋さんのガラス戸に貼ってあるチラシを眺めました。
「茂助さん、ここの物件買うんですか?」
花子さんは茂助さんに尋ねました。
「いや、そうじゃなくて。こうやって近隣の相場を眺めているんだ」
茂助さんは不動産関係で初めての土地に来るときはいつも駅前にある不動産屋のチラシを見る習慣があったのでした。
茂助さんは一通りチラシを眺めるとこう言いました。
「こうしてチラシを見ると新築物件ばかりだねえ。家賃も新築でも6万円台が中心だね。礼金はゼロが殆どだね」
「あ、確かにそうですね。僕のアパートはデザイナーズなのでこれより高い7.5万円です。しかも礼金も1か月頂いています」
太郎さんは自慢げにこう言いました
「茂助さん、とってもカッコいい物件ですよ。きっとびっくりするから」
「そうか、楽しみだなあ」
太郎さんは茂助さんに自分のデザイナーズ物件を披露して褒めて貰いたかったのでした。
3人はアパートに向かって歩き始めました。
間もなくして太郎さんは1年前に比べまわりの風景が一変しているのに気が付きました。
以前は空き地だったところにアパートが増えているのです。また、現在建築中のアパートが目立ちます。
「アニキ、ずいぶんとアパート増えてるわね」
「そうだねえ。それも大手メーカーばかりだ」
やがて3人は駅から徒歩3分のところにある太郎さんの物件に着きました。
昨年同じく建築中だったシマシマハウスのアパートも既に完成していました。
建築中は気が付かなかったのですが、3階建てで20室以上ある大型物件でした。
でも、満室ではない様子で募集中ののぼりが周りに立ててありました。
そして当時空き地だった右隣の土地にもアパートが建築中だったのです。こちらもかなりの大型物件の様子です。こちらは大手メーカーの大東京パレスの建物で、募集看板を見ると、1DKで家賃は6.5万円でした。
他にも周辺には新築アパートが立ち並んでいました。しかもどれも3階建ての大型物件ばかりです。
その大型物件に囲まれた太郎さんのアパートは日当たりが悪くなっていたのでした。
しかもご自慢のデザインが周りの建物に隠れてしまいました。
「茂助さん、ここが僕のデザイナーズアパートです。
そうかい。なかなかおしゃれだね。でも、日当たりが悪そうだね」
「うーん、確かにそうですね。1年前、右隣は空き地だったので日当たりは良かったのですがねえ。いつのまにか変わってしまったなあ」
つづく


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