太郎さんはこのアパートを勧めないと言われてびっくりました。
「なんで、こんなおしゃれなアパートのどこがいけないんですか?」
「確かにデザインは良いね。だけど家賃は高い。東京並みだね。他の社員は会社が家賃補助を出すので気にしていないが、僕は総務担当だから会社としての経費を削減する事を考える。来年からはもっと安い家賃のアパートを選ぼうと思っている」
太郎さんはびっくりしながらも反論しました。
「でも、これだけおしゃれなアパートだから少しぐらい家賃が高くても良いじゃありませんか」
「たしかにおしゃれなアパートだとは思うけれど実際にここで生活すると実に住みづらいことがわかるんだ」
「ええっ!住みづらいんですか」
「そうだよ。デザイン優先で住みやすさに対する配慮が足りないと思う」
「そんなはずはありません」
太郎さんは意外な言葉にびっくりしました。
「例えば、僕はロフトを使わずにこうやって床にマットレスと布団を敷いているよね。
本当はこうすると床にはソファとか置けないのだけど、ロフトは夏場暑くてとても眠れないのでこうしているんだ」
「そんなに暑いんですか」
「ああ、この部屋は二階にあるので特に暑い。この部屋はデザインの関係で天井がなく屋根が直接見える構造になっている。天井がないので断熱効果が薄くどうしても暑くなるんだ」
「あ、そうかあ」
「その上、エアコンの位置が低いので冷気がロフトに届かない」
「天井が高く、開放感があるので初めて見たときは良いなあと思った。でも、実際に住んでみると実際の空間体積が一般の部屋より大きいのでもう一段大型のエアコンが必要なのに、実際には通常の出力のエアコンが設置されている、それなので部屋全体が冷えるまで相当時間がかかる」
「そうかあ。それで床に布団を敷いて寝ているんですね」
「それとこのハイブリッドキッチンって良くないね。鏡がすぐに曇ってしまって髭剃りが不便だ」
「シャワーも良くないね。床の勾配が緩くて排水が良くないので水が溜まったまま。冬場は寒い。浴室暖房が欲しいなあ」
「そうですか。ガラス張りでおしゃれなんだけど使い勝手は悪いんですね」
「洗濯機も扉が二方向にある。最初は便利だと思ったけど扉に隙間があるせいで外気が侵入して虫も入る」
「そうそう、スキップフロアは疲れるね。僕の場合、休日は一日部屋にいるので何回も階段を上り下りする。結構な回数になるので中年には体の負担が大きい」
太郎さんは入居者の感想を聞いてびっくりしました。
デザイナー物件って見た目は良いけどこんなに不満だらけだったとは知りませんでした。
確かに言われてみればその通りで、事前に考えればわかることばかりですが当時は加奈さんのセールストークに惑わされここまで考えていませんでした。
太郎さんは新築の企画時、デザインだけを見て決めたことに後悔しました。
つづく

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