「蔵居さん、まだ退去まで時間があるじゃないですか。だから今の条件で募集すれば大丈夫だよ。何といっても僕のアパートはデザイナーズだもの。いくら新築が増えても怖くないんだ」
「だから今までと同じ家賃7.5万円、敷金、礼金は各一か月でお願いします」
太郎さんは何とか今の家賃を下げたくなかったのです。下げると目減りしている貯金が更に悪い状況になってしまうのを恐れていました。
「はい、わかりました」蔵居さんは意外にも素直に太郎さんの申し出を受けたのでした。
蔵居さんは内心この条件では高すぎると思っています。
蔵居さんは募集する際は地元の不動産屋に客付けを依頼します。でもこの条件では業者が相手にしてくれません。蔵居さんは新人の頃、いつも客付け業者から冷たいあしらいを受けて泣いて帰っていました。
でも、大家さんが家賃決定の主導権を握っているのでそれに逆らうことはできません。
それに香森店長からも大家さんの提示する条件はとりあえず受け入れる様に言われていました。
仮にその条件で決まらなくても責任は決めた大家さんにあります。
家賃が入らず一番困るのは大家さんです。
勿論、タヌキメイトも管理料が入りませんがその額は売り上げに対して大した比率ではないので経営上の影響は軽微です。
「それでは、退去の時は敷金を精算しますので今回の家賃収入から差し引かせて頂きます」
太郎さんは、蔵居さんからの言葉で敷金を預かってる事を思い出しました。
「そうかあ、7.5万円を敷金として預かっているんだ。また、預金が減るなあ」
太郎さんは暗い気持ちで電話を切りました。
やがて3月31日に101号室は退去になりました。
退去立ち合いした蔵居さんからは特に部屋に問題は発生しなかったとの報告を受けました。
ニコポン光学の単身赴任者は平日夜遅くまで働く為、部屋では寝るだけの生活です。食事も会社の食堂で3食済ますので部屋は汚れません。週末は自宅に帰るので1年経っても部屋は殆ど汚れません。大家にとっては良いお客様でした。
タヌキメイトは例月の家賃から敷金返還分をクリーニング費3万円を差し引いて入居者に返還したのでした。
その結果、3月末は家賃収入が減少しました。
新築後1年が経過した時点で、当初の預金は今やかなり目減りしています。
一部屋の空室が出るともう以前の様に残高が増えないことは明らかです。
「もう、今月一杯でキャバクラ行くのを辞めようかな」太郎さんはそう思いました。
太郎さんの3月末の預金通帳には昨年4月末には174万円あった残高が今や半減以下の69.5万円しか残っていません。
これから5月の固定資産税の納税も控えているので非常に苦しい状態になりつつあります。
本当はもっと早くキャバクラ通いを辞めなければならないはずのですが、そのまま先送りしてしまいました。果たしてこんな状況で大丈夫なのでしょうか?



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