ここ4~5年だろうか。タバコや酒類を販売する時にお客様向けの液晶画面に
年齢の告ボタンが表示されるようになったのは。『20歳以上』 『20歳未』
”お押しください”
というアレだ。これは本部から説明があったワケではないが、恐らく、お客様自身に年齢の自己申告をしてもらうことで、万一、店側が未成年に酒・タバコを販売してしまい、それが発覚した場合でも、『年齢を詐称した客側にも責任がある』という主張をすることで、販売店側の責任割合の減免を期待できる、ということが理由ではないかと思われる。どうせそこまでするなら、身分証もしくはTASPOが無ければ販売出来ないシステムにすればいいと思うのだが、そこは売上が下がることが目に見えているので、各本部も踏み込めないのだろう。私個人の考えとしては、『買う人間』にも責任があると思うのだが、現行法では、
『未成年にとって有害な喫煙・飲酒を助長した、販売側が悪い』
ということらしい。でも大変なのよ。年齢確認は。最近は年齢確認のタッチパネルが定着してきたため、トラブルは少ないが、当初は大変だった。たいていのお客様は 『常連のオレ』と思っているので、
『あぁ!?オレが未成年に見えんのか!?』
『あぁ!?毎回押させんじゃねぇよ!』
ですよ…
そしてある日。事件は起こった。
事務所で発注をしていると、パートの磯谷さんが青い顔で駆け込んできた。
『すいませんオーナー。ちょっと…』 嫌な予感… 事務所を出ると、レジ前には
若い女の子とその父親と思しきオヤジがエライ剣幕でカウンターを蹴りながら怒鳴っていた。
『お客様、どうなさいました?』
カウンターを蹴り上げられるのを目の当たりにし、こっちも急速にムカついていたが、表面上だけでも平静を保たないと、治まるモノも治まらなくなってしまう。
『どうもこうもねぇよ!!この娘が未成年に見えっか!?もう25歳だど!!』
私は改めてレジ前の女の子を見た。確かに未成年に見えないこともない。微妙な場合は必ず年齢確認するように!というお達しが本部から出ているので、磯谷さんはその指示を忠実に実行しただけだ。なんら落ち度はない。てゆーか、我々、あなたと面識ないんだから、何歳かなんて知るワケないでしょ?それにあなた、若く見られてるんだよ。嬉しくないの?と、腹の中で思う。そこで改めてその親子に説明をする。
『大変失礼しました。今は警察ならびに本部から、お若く見える方には必ず年齢確認をするように、という指示が出ておりまして、お客様が大変 ”お若い” ようにお見受けしたため、磯谷が年齢の確認をさせていただきました。もしご不明な点がございましたら、警察の方に来てもらいますので、そちらから年齢確認について説明を受けられてはいかがでしょうか?』
暴れる客に 『警察』 という単語はてきめんに効果がある。ただし、あくまで言い方は
ソフトに、だ。
この 『お若く見えた』 というのがツボだったのか、女の子は急に笑顔になった。
ここでたたみかける私。『イャーすいません。警察とか本部がうるさくて。今は必ず ”お若い” 方には身分証の確認をさせて頂いているんですよぉ。』 すっかり態度を
軟化させた女の子は身分証をキチンと提示し、まだしかめっ面のオヤジを引っ張って笑顔で帰っていった。気の毒なのは怒鳴られた、パートの磯谷さんである。その日は定時までショボン、となっていた。行政や本部は、こうした現場の苦労を判っていない。大変なのはいつだって最前線の人間である。(つづく)