東京スカイツリーに茨城の技術が集結した送信用アンテナ | Space

Space

Opened in harvest moon (full moon) of the Mid-Autumn
Since 2013.9.19

情報033:世界一高い東京スカイツリーに、茨城の技術が集結した送信用アンテナを設置

日立電線株式会社
地上634メートルの高さに耐える、地上デジタル放送用アンテナシステムを開発

自立式電波塔として世界一の高さを誇る「東京スカイツリー」。その美しいフォルムは、東京の新しい観光スポットとして注目を集めています。そして、スカイツリーのもうひとつの役割は、地上デジタル放送用の電波の送信。そのために最も重要となるのは、最上部のアンテナ取付部「ゲイン塔」に送信用アンテナシステムを設置することです。そのアンテナシステムの開発から設置までを委託されたのが、茨城県のものづくり企業『日立電線株式会社』です。

このプロジェクトがスタートしたのは、2009年のこと。日立電線が、日本放送協会(NHK)、日本テレビ放送網株式会社、株式会社テレビ朝日、株式会社TBSテレビ、株式会社テレビ東京、株式会社フジテレビジョンの在京6社より、東京スカイツリーのゲイン塔に設置される地上デジタル放送用アンテナシステムを受注したのが始まりです。


" />
今回のプロジェクトで最大の課題は、地上500メートルを超える上空での強風対策でした。開発を依頼されたアンテナシステムには、最大瞬間風速110メートルという強風にも耐えられる強度や、風の抵抗を極限まで抑えた形状が求められました。これは理論上では、1300年に1度、吹くか吹かないかという極めて強い暴風です。

まず強度に関しては、厚めの部材を使用することで対応。しかし重くなりすぎないよう、強度と重量のバランスがとれた部材を選択しました。また、風圧に耐える形状を実現するため、株式会社日立製作所の研究所や外部の研究機関にも協力を要請。アンテナ1面に掛かる風圧や風の流れをシミュレーションし、最適と思われる形状などを割り出します。さらに、その結果を実証するために風洞実験も行いました。アンテナシステムの1月6日スケールモデルを作り、実験場で風を当て、風による影響を分析。こうした試行錯誤を繰り返しながら東京スカイツリーに設置されるアンテナが誕生しました。

そして出来上がったのは、アンテナ素子、反射板、カバーで構成される、長さ約150センチメートル、幅約40センチメートル、重さ約50キログラムのパネルアンテナ。そのアンテナを1周40個、2段で80個を2システム(160個)、それを4ユニット(合計640個)重ねたものが、東京スカイツリーのゲイン塔に設置されることになりました。

世界で最も高い場所での、アンテナ取り付け作業に挑む


次にアンテナを現地に運び、設置する工程です。まず検討されたのが、アンテナシステムの運搬方法。もちろん工場で組み立てて、そのまま運べれば良いのですが、大きさや重量を考えると非常に困難です。そこで、茨城県日立市の高砂工場で6分割に仮組みし、最終的には現場で組み立てる方法を採用しました。6分割した理由は運び易さだけではなく、6角形のゲイン塔にスムーズに設置するためでもあります。そして運搬中に歪みなどが出ないように、しっかりとフレームに固定しました。

アンテナを東京スカイツリーに運んだら、次にクレーンで吊り上げ第一展望台に平置きします。そしてタワークレーンでさらにゲイン塔まで吊り上げるわけですが、ここでも500メートル超という高度と上空を吹く風が最大の障壁。もしトラブルが発生し、アンテナがゲイン塔に激突したら一大事です。そこで作業を行うには天候が良いことはもちろん、風も10メートル以下であることが条件となりました。

アンテナを取り付けるゲイン塔は、地上で組立て、高さ634メートルまでタワー内部で引き上げるリフトアップ工法によって設置されます。ゲイン塔のリフトアップ作業は、東京スカイツリーの建設を担っている株式会社大林組によって実施されます。アンテナシステムの設置作業は、ゲイン塔の引き上げに合わせて行われます。ゲイン塔の最上部には、揺れを低減する制振装置が設置されており、その下にアンテナシステムを設置していきます。ここで問題なのが、上に付いている制振装置の直径より、下に付けるアンテナシステムの直径が小さいこと。つまり、アンテナを制振装置より奥にはめ込まなければならないのです。その問題を解消したのが高性能な建築機材。今回の工事用に特別注文した最新の機材が大きな助けとなりました。

もちろん、500メートル超での取り付け工事は、作業に当たるメンバーも初めて。スムーズに工事を進めるために、何度もリハーサルが行われました。工場内にゲイン塔の模型を造り、アンテナのモデルと本番で使用する建築機材を用意。最もスムーズに作業を行える手順を試すと同時に、予測されるトラブルなどの課題をクリアしていきます。こうして経験豊富な熟練のメンバー約30名が、実際の取り付け工事に臨んだのです。

地上波デジタル放送を支える国内トップクラスの給電線

ところで、東京スカイツリーは世界一という高さがクローズアップされがちですが、美しいフォルムにもこだわりがあります。それは、日本ならではの伝統の美。タワーの建築デザインに、日本刀のもつ「そり」、寺院や神社の柱に見られる中央が緩やかに膨らんだ形の「むくり」を取り入れることで、見る角度によって多彩なシルエットが作り出されるのです。そして、この高度なデザインを高い安全性とともに実現しているのが、施工に当たっている「株式会社大林組」です。

日本を代表する大手総合建設会社の大林組は、世界でもトップクラスの技術・開発力で東京スカイツリーの安全を支えています。その一つが、大林組が開発したナックル・ウォール(節付き壁杭)です。このナックル・ウォールは大林組の地中連続壁工法で構築する壁状の杭に節をつけたもの。節をつけることで杭が地盤に固定され、加重を支える力が大幅に増大します。また壁状のため剛性が高く、地震時の水平の力にも高い抵抗力を発揮。2011年3月11日、東京で震度5強の揺れを観測した東日本大震災でも構造体への被害はまったく見られず、優れた技術力を証明することになりました。こうして2011年3月18日にアンテナシステム設置工事が完了し、地上634メートルに到達した東京スカイツリー。しかし、これで完成というわけではありません。アンテナを稼働させるためには、給電線の配線工事が必要になります。実はこの工程が、日立電線が最も得意とする分野の一つ。日立電線はその社名が表すように、放送用アンテナに関する給電線で国内トップシェアを誇る企業なのです。

日立電線は1964年に豊橋中継局へ放送用送信アンテナシステムを納入して以来、多くの放送用アンテナシステムを拡販してきました。そして、地上デジタル放送用送信アンテナは、全国数十局の親局や、多数の中継局に採用されています。また送信機からアンテナへ電波を伝送する主給電線の国内トップメーカーとして、日本国内の多くの放送局で日立電線のケーブルが使用されているのです。


今回使用する給電線は、直径150ミリメートルと非常に太いケーブルで、1メートルあたり約8キログラムという重量です。その電線を数百メートルも使って行われる配線工事は、大変大掛かりな作業で,約半年の工期が必要となります。東京スカイツリーの竣工は2011年の12月になる予定です。

そして、2012年の春に開業,約1年程度の試験電波期間を経て、2013年の1月頃から本放送が開始される予定です。アナログ放送とは違い、美しく鮮明な画質でテレビの新しい可能性を引き出す地上デジタル放送。その高度なシステムの実現に、茨城のものづくり技術が一役かっているのです。

取材協力

日立金属株式会社(旧日立電線株式会社)(外部サイトへリンク)

東京スカイツリーライセンス事務局(外部サイトへリンク)

←情報032

情報034→

←いばらき・もの知り情報

このページに関するお問い合わせ
知事直轄広報広聴課県民広報
茨城県水戸市笠原町978番6
電話番号:029-301-2113
FAX番号:029-301-2168
お問い合わせフォーム

http://www.pref.ibaraki.jp/bugai/koho/kenmin/hakase/info/33/index.html

放送用アンテナ




http://www.hitachi-metals.co.jp/products/infr/in/broadcast_antenna.html
※Webから。