今までに読んだ日本語関係の本でお勧めのものを挙げていく。
『日本語全史』沖森卓也 著
古墳時代から現代にいたるまでの発音・文法・語彙の変遷を概観した本である。
本書は自分の中では革命的な本であった。
これまで頭の中では「文法文法」「現代文法」の二つに明確に区分けしていたが、両者がなめらかに繋がるようになった。
概ね、平安時代ごろに文語文法というものが完成するが、鎌倉時代以降少しずつ崩壊していき、現代文法に近づいていく。
例えば、係り結びというものがあるが、鎌倉時代の史料では連体形・已然形とすべきところを終止形にしている例があると言う。
そして徐々に係り結びは廃れていき、現代の標準語では完全に消失した。
本書ではこのような例を沢山学ぶことができる。
『日本語「形成」論』﨑山理 著
日本語がオーストロネシア語族とツングース語族の混合言語であると主張している。
オーストロネシア語族は、現代でいうマレーシア語やインドネシア語などが含まれる語族であり、いわば「海の言語」である。ハワイ語もオーストロネシア語族である。
ツングース語族は、有名なところだと満州語、他にはウィルタ語などが含まれ、オーストロネシア語族と比較すると「陸の言語」である。
自分もこの説にはかなり同意しているのであるが、確信にまでは至っていない。
『日本語の語源を学ぶ人のために』吉田 金彦 編
日本語の起源については様々な説が分かれているのであるが、それぞれの説における名だたる研究者が少しずつ執筆している。
いわばアンソロジーのような本である。
アイヌ語、古代中国語、タミル語、モンゴル語などとの比較を学ぶことができる。
先ほどの﨑山氏も本書で解説文を書いている。
『言語の本質』今井むつみ, 秋田喜美 著
オノマトペやアブダクション理論について解説している本である。
アブダクション理論は簡単に言うと、限られた使用例から原則に関しての仮説を立て、実践に移すという理論である。
主に言語の習得過程について理解できる。
『日本語音声学入門 改訂版』斎藤 純男 著
国際音声記号の説明から始まり、日本語の発音について説明している。
日本語の発音については、ほとんどの人が暗示的(無意識的に)に習得しているので、改めて発音を学習すると様々な発見がある。
特に、ハ行の複雑さには驚いた。
『広辞苑 第七版』新村 出 編
日本語の語彙で、社会一般で(ある程度)人口に膾炙したものを抽出して掲載している。
和語に関して、語源についてもいくつかは触れているのでありがたい。
例えば、「優しい」は「痩す」に由来することをこの辞書で知った。
紙版はもちろんだが、アプリ版もお勧めである。出先でちょっと気になったことを簡単に調べられるし、
後方検索や全文検索などの機能が大変重宝する。
『日本語源広辞典』増井 金典 著
語源に特化した辞典。語源を扱った辞書はいくつかあるが、本書はかなり網羅的である。
漢語の収録が多く、多くは自明な説明であるのが難点である。
『新明解語源辞典』小松 寿雄, 鈴木 英夫 著
こちらも語彙に特化した辞書。程度の収録語数はそれなりにあるが、語源広辞典にはかなわない。
頑張れば通読もできそうである。
『語源501 意外すぎる由来の日本語 』日本語倶楽部 編
一般向けの文庫本であるが、参考文献に膨大な数が示されており、ある程度信頼しても良さそうである。