この字は「システム」を圧縮して一字としたものである。
この漢字の面白いところは、「システム」というカタカナを部品として用いている点で、会意文字とも考えられ、形成文字とも考えられる。
最近ネットで話題になっている文字であるが、この漢字が新しい漢字として成立するだろうか?
字形は「さんずい+会」であるが、似た字形の漢字はすでに存在し、中国語の簡体字で浍がある。
浍 kuai4 と読み、田畑の用水路、側溝を意味する。
この浍という既存の漢字に「システム」という読みを与え、日本国内で利用する可能性を考える。
これには以下の実例を利用できそうである。
事例1 既存の漢字に新たな外来語の音を充てる例
粉 訓読み:こな、音読み:フンであるが、実は「デシメートル」という読みが与えられている。
事例2 字形を利用して外来語の音を充てる例
弗 音読み:フツであるが、「ドル」という読みが与えられている。 字形が$の形に似ていることからこの読みが与えられている。
このような例から、浍に「システム」という読みを与え、実用していくことは不可能ではないと思われる。言い換えると、今日から使うことができる。
次に新たに上記の「システム」という新字を作る可能性について考える。
上記新字は会の人の部分が「入」になっている。兪ユという漢字と同じであるが、会という漢字で「入」となることは筆者の確認する限りないようである。この点で上記新字を浍とは異なる独自性を持った「国字」として認めることはできそうである。この場合、パソコンで出力できる文字として登録されていないので、手書きでの利用にとどまり、文字としての普及は浍を利用する場合よりも大幅に遅れると予想される。
最後に「システム」という漢字が定着した場合、現実に起こりうるシナリオを考える。
手書きよりもパソコンですぐに出力できる浍が「システム」という読みを与えられて日本国内で浸透する可能性はある。
仮にめでたく新字として用いられた場合、「システム」という語彙はIT系でとくに用いられるものであり、一般社会に広く用いられるようになる可能性は低く、限定された業界でのみ用いられる所謂「位相文字」として定着すると思われる。このような漢字には广+K, 广+Oという漢字があり(下図)、この漢字は一般社会ではあまり認知されていないが、慶応大学においてよく用いられた「位相文字」である。
国家的に認められるようなものになる可能性は高くないが、どちらにせよ、一種の「遊び文字」として日本社会の一角で実際に実用される可能性はあり、個人的には実用された時点で一つの漢字としてみなしてよいと考える。


