本『年上の女性』をはじめから読む → scene1


歩太くんは、いつも私のマンションの前まで送ってくれる。

その日の彼は少し落ち着かない。

そんな様子に、私は気付かないふりをする。

マンションが近づいてきた。

もう少し一緒にいたい、そんな想いを細胞が感じる。



「洋子さん」

彼の呼びかけにドキリとする。

「うん?」

優しく応じる私は、ドキリドキリと鳴る心とは裏腹に、

何も気にしていない風を装う。

「遊園地好きですか?」

早口に彼は言う。

「遊園地?・・あぁ・・うん、好き・・だけど」

「今度、一緒に行きませんか?」

「あ・・うん」

ホッとしたように笑う彼。

つられて私も笑う。

拍子抜け。



自宅に帰って反省会。

何を期待してるんだと恥ずかしくなる。

ホッとする自分と拍子抜けする自分。

どちらが本当の自分?



20歳の男の子相手に何やってんだか・・。



そう思いつつも、

クローゼットの中から遊園地に来て行く服を選ぶ。

これ前着たし、これ前着たし

・・これは・・ないな・・。

遊園地て何着て行けばいいの?

実は遊園地はあまり好きではない・・

と言うより苦手だ。

絶叫マシーン系には一切乗れない。

残念なことに、

観覧車や回転木馬やコーヒーカップのようなものしか無理だ。

ほとんど行かないし、何があるのかも、

あまり知らない。

思わず好きだと言ったのは、


突然のことで、思わず言ってしまったのと、


彼に会いたいと思ったから。


服がないな・・明日買いに行くか・・。

最近、洋服代の出費が増えている。

「まぁ、いっか。何回も着るしね」

ウキウキする自分をねじ込めて、

私は大きな独り言を言ってみた。


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