本『年上の女性』をはじめから読む → scene1


次の日も、彼はコンビニの前を掃除している。

私を見つけて、やっぱり笑顔になる。

「忙しいんですか?」

「うん」

「仕事・・ですか?」

「別に仕事は忙しくないけど」

彼を見ずに、よそよそしく答える。

「なんか・・ありましたか?」

「別に・・忙しいだけ」

相変わらず目線を下にしている私。

きっと彼は困った顔をしてる。

「あの・・・彼氏さんとか・・出来ましたか?」



出来ましたか?



いないと決め付けられていたのが、なんだか恥ずかしい。


歩太くんこそ、あの女の子は誰?


顔を上げて私は言う。



「前からいるけど」



本当にバカだと思う。

自己嫌悪。

私に、ヤキモチを焼く権利はない。

わかっている。

わかっている。

わかっているのに。

何故、あんな下らない嘘をついたのか。



聞いた彼がどんな顔したのか、わからない。

あまり見ずに、その場から離れたから。

早く立ち去りたかった。

下らない自分を、あれ以上、彼に晒すのが嫌だった。

ため息が多い夜だった。

その日、歩太くんからの連絡はなかった。


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