「自殺って自分を殺すって書くだろ?人を殺すことには変わりないのに罪にはならないんだぜ。それっておかしくないか?」
アンドレはネットニュースを見ながら
いつものように、ぼやいている。

「ああ。俺も全く同感だ。」

「自殺するやつの気がしれねぇよ。いじめがどうとか、学力がどうとか、周りの圧力がどうとかで。俺らみたいな奴らもいるってことも知れよな。なぁ、相棒?」

「ああ。そうだな。」

僕たちはいわゆるハーフだが、見た目は完全に黒人である。今までの人生、日本にいて差別を受けなかったわけがない。
外国で日本では人種差別がほとんどないというニュースをやっていたが、そんなのは嘘っぱちだ。黒人、そもそも外国人の割合が少ない。ただその珍しさで、僕たちはいじめの対象となる。お前たちもヨーロッパではアジア人というだけで差別されることもあるのに。

「なぁアンドレ。居酒屋でも行かないか?」

「ああ、いいよ。相棒。」

僕たちはいつも日本語で話している。
というか日本語の方がお互い話しやすいからだ。

僕たちは20時の夜道を適当に歩いて
一番近いチェーン店の居酒屋へと入った。

中に入ると店員さんと目があった。
何を考えているかは分かる。 

「ハ、ハロー。」
彼女の困惑している声をかき消すかのように
「あ、二人なんですけど空いてますか??」

すると彼女は、
「あ、あ…。はい!少々お待ちください。」
と言ってテーブルを確認して
「こちらのお席へどうぞ。」と案内してくれた。

僕たちがテーブルに座ると
彼女はキッチンの方へ戻った。
彼女が何をしているのかは分かる。

ビールを頼んだ僕たちは
お互いの仕事について現状を報告し合っていた。
少しほろ酔いになってきた時、
離れたテーブルの若者がこう言った。

「黒人っていいよなぁ。
酔っても顔赤くなってもよく分かんねぇじゃん。」

アンドレも聞こえていたようだ。
というか聞こえるに決まってる。
言った本人も酔っているから、
通常よりもボリュームか大きくなっている。

アンドレは鼻の穴が少し広がって
瞳孔も開いていた。 

「アンドレ!……やめとけ。」

するとアンドレはゆっくりと目を閉じて
「分かったよ。」と言った。

僕たちは店を後にして
お酒のせいか何なのか、気持ちの悪いまま、家に帰ることにした。