ペンションなんて、私もヒロシも泊まったことがなく少しうきうきだった。ところがこんな気持ちも、到着するなりげんなりしてしまうことになる。

狭いベッドにとても清潔とは言えないお布団。隣の声も良く聞こえてくる。

唯一もの救いは、さすが湯布院。露天風呂だけは情緒あって素敵だった。

と考え直してみたものの、どう考えてもいい初夢は見られそうもなかった。

そして翌朝元旦をなじみのないペンションで迎える。

食事は部屋ではなく、もちろんペンションらしく食堂でみんなで頂く。
手作りの素朴な朝食とおばさんのつくり笑顔で微妙な気分だったが、雪のつもった道を歩けるように近所の人が整えてくれた歩道がなんとなく昔を思い出し、そのあたりを散歩したりするとなんだか不思議と癒されてきた。

そしてその日は偶然にもキャンセルがでた旅館で元旦の夜を過ごすことになる。昨日の今日で、苦労してとった宿だったので、余計にずいぶんいい旅館に感じる。

こうやって二人は、予約を何ヶ月も前にした他の宿泊客にまみれて、何事もなかったようにゆっくりと正月休みを楽しんだのであった。

この思い出は今でも忘れられない経験となった。
怪しいペンションも、旅館も死ぬまで忘れないだろう。

ここでは、私にもサバイバル精神が備わっていることに気づき、最初から無理と思わずに、やれば何でもできるということを学んだ。

思い切った行動もわるくないな。と心底思った。

こうやって、船でヒロシが眠っている間に、私は問題解決力を知らぬ間に体得させられた。

これからはヒロシ主将と呼んだほうがいいかもしれない。

弟子は主将が眠っている間に、ミッションを見事にやり遂げたのだ。これもヒロシの私を育てる計算なのだろうか。もしくはたまたま湯布院に行きたかっただけなのだろうか。

それは未だに謎である。