1994年、こまつ座の34回公演として紀伊國屋ホールで上演された名作です。僕が初めて観た井上作品が「きらめく星座」で、この作品も8月5日に広島に向かうという会話が出てきて、ゾクッとしたのを覚えています。


井上ひさしさんのライフワークだった「戦争」とりわけ、ヒロシマとナガサキをテーマとした作品であるという意味ではつながりを感じました。「父と暮らせば」には「きらめく星座」にも出演されていたすまけいさんと梅沢昌代さんが出演されています。


原爆投下後の広島。自分だけ生き残ってしまった負い目から「自分だけ幸せになってはいけんのじゃ」と自らに恋を禁じた女性の元に、亡くなった父親が幻として現れ、娘に幸せになって欲しいと励ます二人芝居です。


黒木和雄監督、宮沢りえさん、原田芳雄さんで映画化もされています。また、井上ひさしさんの想いを受け継ぐ形で山田洋次監督が「母と暮らせば」という形で映画化されています。こちらは舞台をナガサキとしています。ご存知の通り、吉永小百合さんと二宮和也さんの名演が光るところです。


こまつ座150回公演として、松下洸平さんと富田靖子さんの二人芝居「母と暮らせば」が8月紀伊國屋で再々演されるとのことです。僕はこの芝居を宮崎で見損ねていて、昔ならチケットを買って飛んで行ってるところです。


8月6日、9日、15日という日本人にとっては忘れられない、忘れてはいけない暑い夏真っ只中です。


私の母は、小倉の軍需工場に学徒出陣で送られたそうです。「もしあの日、小倉が晴れて雲がなければ、私たちの上に原爆が落とされていたんよ」と話していたのを覚えています。親戚の叔父さんが潜水艦に乗っていて戦死し、骨壷には石が入っとったと話してくれる大叔母も亡くなりました。


戦争を語り継ぐ人も少なくなり、学校や地域での平和学習が成立しがたくなってきています。それだけに、子どもたちのトラウマにならないような配慮はしながらも「平和教育」は必要なのかもしれないと思います。


政治的なテーマではなく、日本の歴史として、人として幸せに生きる当たり前の権利として、共に学ぶ環境を整えることを、学校、地域社会、教育委員会や企業の取り組みにできないでしょうか?


誰かが楔(くさび)を打って、流されていく何かを立ち消えてゆく何かを、意識的にここに留めておく必要はないだろうかと思えてしかたありません。