このシルバーウィーク(とやら)の間に、とある地方のとあるスーパーマーケットに出かけた。台風の影響で、ひどい雨に捕まってしまった。
「私たちが子どもの頃から、買い物はすべてその店でしてた。コンビニなんてなかったから、夕飯の買い物は全部そこ。」
車を運転しながら、小学校の思い出に浸る相棒。
「遠足の前の日なんてもう大変。学校中の生徒が入れ替わり立ち替わり、遠足のおやつを買いにくる。特別なお弁当を期待される母親は、子どもたちでごった返す前の日に買い物は済ませてある。」
得意そうに聞こえるのは、彼女が自分の故郷の姿を愛しく思っていて、誇りに思っているからだ。彼女の興奮気味に紅潮した頬が輝きを増す。
「そこにいけばなんでも揃うって私たちはそう思っていた。たった一件のスーパーだったし、地域の人のニーズを把握しきった心憎い品揃えだった。人気商品を切らすことなんてありえなかったわ。でも…」
彼女の顔が少し曇った。
「大型の安売りチェーン店が来たら、客足は遠のいた。わかるけど、あんなに薄情に客は動くものかしら。うちの母なんて、何があっても動かなかった。『値段だけじゃないんだ。物が違うのよ。』そう言ってせっせと昔ながらの店に通った。」
そんな話の間に店に着いた。車は店の軒先に停められた。僕たちは傘もささず濡れることもなく、店の中に入れた。
「お客様が雨に濡れないように、工事費はだいぶかかったらしいの。」
軒を長くし、ビニールを貼り、車の運転席と助手席からは傘無しでお店に入れる。行き届いたサービスだ。
野菜の値段が高騰していることを嘆いていたが、値段を見てもかなり営業努力をしているのが伝わってくる。
魚は新鮮で安い。種類も豊富で、見ていてワクワクする。肉のバリエーションには特徴がある。鶏肉の提供の仕方が独特だ。鶏の部位が豊富で値段も手頃だ。特に鳥刺しの新鮮さは目で見てわかる。絶対の自信を持っていることが伝わってくる。どれもこれも欲しくなる。
僕は生の鯖の三枚おろしと、鳥のハツを買った。牛肉や豚肉も新鮮でリーズナブル。とても魅力的だったが、メニューを考えてそこに落ち着いた。
先に進むと、地元のパン屋さんと提携しているのか、オリジナルの商品を揃えたベーカリーがあった。それほど派手ではないが、申し分のない品揃えで、つい買いたくなった。しかし、緊縮財政の約束を守るべく、我慢した。
地元のお年寄りがカートを押しながら買い物をしている。微笑ましく眺めながら、雨に濡れない張り出しの長い軒に停めた車に乗って、店を後にした。
支店もない。一店舗主義を貫いた地元に愛されるスーパーの名前は、「希望の店」である。スーパー希望とかではない。「希望の店」という店なのだ。今となっては、攻めたネーミングだ。
「略して『希望』だなんていう人はいないのよ。『希望の店に行ってくる』って必ずフルネーム。」
すごいことだと思う。目と鼻の先にできた大型廉価店の駐車場は車でいっぱいだが、若干寂しい駐車場の埋まり方だ。
しかし断言する。マニュアルで凝り固まったチェーン店とは絶対に違う、誇りと地元愛がここにはある。「希望の店」という店には、希望が溢れている。
素敵な出会いに感謝だ。