小学5年生の時、給食後のお昼休みは、校庭でクラスメイトと遊ぶのが日課だった。


そんな毎日が何ヶ月も続いたある日、いつも誰とも交わらず一人でいるクラスメイトの事を気にした。


別にいじめられているわけではなく、ただ少し体の線が細くて、それだけで周りからちょっと横に外れているというか、怒涛を組まず誰とも交じらわずいつも一人静かに一日を過ごしている、そんな子がいた。


ある日、そうある日突然に、彼はお昼休みに一人何をしているのだろう?と無性に気になり、レモンちゃん行くよ!と声をかけて来た子に、今日は止めておく!と言った。


どうしてあんなに気になったのか、今なら解る。


私は静かな人になりたかった。


静かで凛とした人間に憧れ、自分もそんな人でありたいと望んでいた。


悲しいかな、全く真逆の人間として形成されてしまった事は、とても残念である。笑


外の賑やかさとは反対に、誰もいない教室に彼と二人。


彼は本を広げ静かにページをめくっている。


ふーん、読書しているんだ!と思ったが、何を読んでいるのか聞く勇気はなかった。


私は、読書の邪魔にならない様窓際の席に座って、教室を眺めたりみんなが遊んでいる校庭を眺めて45分を過ごした。


そんな日が続く事数日。


私がみんなとお昼休みを共にしない理由は、ユリちゃんが嫌いだから、という結論に至ったらしく、それが私の耳に聞こえて来た。


あーーくそ邪魔くせーー!!

だから女子って嫌い!!


面倒なのと、ユリちゃんに悪いと思ったが言い訳をする事なく、次の日からまた校庭遊びを再開した。


休み時間終了の、キーンコーンカーンコーンのベルの合図がなるとダッシュで教室に戻り、すぐさま彼の顔を見る。


我一人、いつもと何一つ変わる事のない時間を過ごしていた事は、穏やかな彼の顔を見れば察しがつく。


あの時、何か声をかけてみれば良かった。


一人は寂しくはないかと。


質問してみれば良かった。


だが、後にこの言葉を知った時、もしかしたら彼は11歳にして既に悟っていたのかも、と思った言葉。




愚かな者を道づれにするな

独りで行くほうがよい

孤独を歩め



この仏陀の言葉を知った時、一番に彼の顔が浮かんだのを、今朝ふと思い出した。







今日あなたは空を見上げましたか

空は遠かったですか 近かったですか

雲はどんな形をしていましたか

風はどんなにおいがしましたか

あなたにとっていい一日とはどんな一日ですか

「ありがとう」という言葉を今日口にしましたか


窓の向こう 道の向こうに何が見えますか

雨の滴をいっぱいためたクモの巣を見たことがありますか

樫の木の下で あるいは欅の木の下で立ち止まったことがありますか

街路樹の木の名前を知っていますか

樹木を友人だと答えたことがありますか


この前 川を見つめたのはいつでしたか

砂の上に座ったのは 草の上に座ったのはいつでしたか

「美しい」とあなたがためらわず言えるのは何ですか

好きな花を七つ挙げられますか

あなたにとって「わたしたち」というのはだれですか


夜明け前に鳴き交わす鳥の声を聴いたことがありますか

ゆっくりと暮れていく西の空に祈ったことがありますか

何歳の時の自分が好きですか

上手に年を取ることができると思いますか

世界という言葉でまず思い描く風景はどんな風景ですか


今あなたがいる場所で耳を澄ますと何が聞こえますか

沈黙はどんな音がしますか

じっと目をつぶる すると何が見えてきますか

問いと答え 今あなたにとって必要なのはどっちですか

これだけはしないと心に決めていることがありますか


いちばんしたいことは何ですか

人生の材料は何だと思いますか

あなたにとって あるいはあなたの知らない人々にとって

幸福って何だと思いますか


時代は言葉をないがしろにしている

あなたは言葉を信じていますか






幸せですか?だったら良いな。

心を許せる人が側にいますか?だったら良いな。

あなたの人生はどうでしたか?

空のように広く、花のように美しく、風のように心地よく、そしてやっぱり静かで穏やかなものであったら良いな。

これまでも、そしてこれからも!