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とある間違い電話

もう十数年も前の話。
私がまだ25~28才頃の事だ。
大変印象深い間違い電話を受けたことがある。

時代としてはそろそろ携帯電話が普及してきた頃。

その日、私は仕事がが休みで、携帯電話を全く触っていなかった。

夜、ふと携帯電話の着信に気が付いた。
何十件も同じ番号から着信がある。
しかも公衆電話から。

留守番電話にも着信が。

一本目の留守伝を聞いてみた。

「もしもし、ヒロシ?(名前は忘れたが男性の名前を呼んでいた。ヒロシは仮称です)」
「お父ちゃんが現場で倒れたって!」
「今から病院行くから、また後で電話するよ!」


・・どうやら母から息子に対する電話のようだ。
しかも父が倒れた・・と。



そして二本目の留守伝。

「ヒロシ!? 電話に出なさい!!」
「お父ちゃんクモ膜下出血で今から手術だよ!」
「もしかする事もあるから、急いで帰ってきて!」
「病院の電話番号は×××よ」


三本目。
「あんた、何で電話でないのよ!!」
「お父ちゃん死んじゃうよ!」


おいおい。(´д`lll)
ここで私も事の重大さに気が付いた。
というかお母さん、息子を責める前に自分がミスってる・・

そして、ここで携帯電話の留守電が一杯になり、この後は「お客様センター(正式名称は知らないけれど、どこかで留守電を預かってくれるサービス)」に大量のメッセージが吹き込まれている。

途中同じような電話が何度も・・
「早く電話に出て!!!」


そして最後の留守電。





「お父ちゃん死んだよ」






別に私が悪いわけではないが、何か猛烈に悪いことをしたような気分だ。

とりあえず、お母さんが話していた病院の電話番号に掛け直してみた。

「もしもし、あの・・なんと説明してよいかわかりませんが、今日そちらの公衆電話から何度も電話を頂いてまして、その留守電の中にこの電話番号が吹き込まれていたので電話したのですが・・」
「本日朝○時頃にクモ膜下出血で運ばれて、手術をされた方の奥様らしき人から電話を頂いていたのですが・・」
「え?名前? 知りません」
「私ですか? 諸岡と言います」
「関係ですか? えっと・・他人です」
「いや、なんか間違い電話のようでして・・」

病院の人も何だか意味不明の様子だったが、とりあえずまだ遺族の方が病院にいるということで、電話を繋いで貰った。


お母さんも意味が分かっていない様子。

母「もしもしヒロシの母です」
私「あ、すみません。今日何度も電話を頂いていたようなのですが・・」
母「ヒロシのお友達ですか?」
私「いや、私は息子さんを知りません。他人です」
私「電話番号をお間違えではないですか?」
母「そんなはずはありません」「手帳に控えてありますから・・」
母「030-×××・・・」と私の携帯番号を読み上げる。
私「あぁ、それ間違いなく私の電話番号ですね」
母「息子の電話はこれしか知りません。どうしたら良いでしょうか?」
私「息子さん一緒に住んでないのですか?」
母「大阪の大学に行ってます」「私は福岡(鹿児島だったかも?)です」
私「なら大学に電話してみたら如何ですか?」
母「でももう夜なので・・」
私「そうですね・・」
私「とにかく間違い電話なので、息子さんには何らかの方法で早くお知らせしてあげて下さい」
私「お役に立てず申し訳ありません。ではこれで・・」


その後、この母と息子がどうなったのかは知らない。

非情に後味が悪く、未だに印象に残っている。

なぜか急にこの事件を思い出したので書いてみました。

皆さんも大切な人の電話番号は必ず一度確認しておきましょう!

いざという時困りますよ。