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カムイ書房

秋葉原『スープカレーカムイ』店主・諸橋亜蘭の小説サイト

 「いや、正しくは西岐の姫昌さまに、だな

 子牙は檻の前に座る。その金髪に沙旦はさらに語気強く浴びせる。

「姫昌? 姫昌は商王を弑さんとしたが露見し、いまはその身を獄に繋がれているはず!」

そう噛みつくな。まるで餓狼だな。まぁ、座れ」

 まだ咆えかからんとする人狼に、子牙はさも億劫に手の平を振る。尖った鼻の両の穴から荒く息を吐きだしつつ、不承不承沙旦はどっかと尻を落とす。

「まぁ、よく聞け」

 子牙は山を下りてからいままでの経緯を話す。

 沙旦たち羌族が危惧しているのは、西岐が商王に屈従その証として彼らを掃討するのではないか、ということであった。

 繰り返し、姫昌は王に従属してもいなければ、おまえたちを討伐する意思もない、と子牙は伝える。おまえほどに聡い漢が、なにゆえ妄動したか?と問われ、若き族長は、ばつが悪そうに視線を落とす。

「沙旦よ、一体誰にけしかけられた」

「けしかけられた……だと?」

「そうだ。西岐がおまえたちを掃滅しようとしていると誰が説いたか。どこのどいつがいまなら西岐をその手におさめられると囁いたか」

 沙旦には思い当たる者がいた。さらに低く頭を垂れ、ぼそりと「悪来」とだけ言った。