キリン、ミャンマー市場から撤退へ 傘下企業から莫大な利益を得ているミャンマー国軍
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《ニュース》
キリンホールディングス(以下、キリン)は14日、ミャンマー市場から撤退することを発表しました。
《詳細》
キリンは、現地の国軍系企業「ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)」との合弁ビール会社「ミャンマー・ブルワリー」と「マンダレー・ブルワリー」2社を運営しています。合弁2社はミャンマーのビール市場で8割近くのシェアを占めていますが、キリンは6月末までにそれぞれ51%ずつ保有している株式を全て売却する方針です。
同国で昨年2月に軍事クーデターが起きた直後、キリンは「当社のビジネス規範や人権方針に反する」として、MEHLと合併解消に向けて交渉を行ってきましたが、協議は難航していました。このまま事業を継続すれば国軍に利益を供与することになりかねないとして、撤退を決断したといいます。
キリンは、株式の売却先として国軍系企業以外を選定する方針ですが、買い手を見つけられるかは不透明です。
《どう見るか》
ミャンマー国軍は、MEHLなどの傘下企業から、膨大な利益を得ています。
2019年の国連人権理事会の報告書によると、MEHLと国軍系企業「ミャンマー・エコノミック・コーポレーション」の2社の傘下には、不動産やホテル、金融など、幅広い分野に100社以上の企業が存在し、軍の活動資金源になっているといいます。しかも、ミャンマー国内の企業の8割は軍部に何らかの関係があるという専門家の指摘もあります。
キリンを含めた少なくとも10社以上の日本企業が、国軍系企業との直接取引や軍の収入源になる可能性のある事業に参加していることが分かっています。民主化を求めるミャンマー市民が軍に激しく弾圧されていることを考えると、ミャンマー市場から手を引くというキリンの決断は正しいものと言えるでしょう。
加えて、本誌・本欄で指摘してきた通り、ミャンマー軍部のバックにいるのは中国です。中国政府は「ミャンマーの軍政を認めて支援する代わりに、同国を中国の支配下に置く」という明確な意図を持っています。ミャンマーの現状を「中国の侵略の一端」として認識したうえで、他の日本企業もたとえ大きな損失を出したとしても、ミャンマー市場から撤退する決断を下すべきでしょう。