不妊症と甲状腺

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不妊症の疑いで受診された患者さんに、私が必ず調べる項目の一つにTSHと言うホルモンがあります。TSHは喉のあたりにある甲状腺という臓器を刺激するために脳の中から出ているホルモンです。

 

甲状腺で作られる甲状腺ホルモンが少なくなると、脳がそれを感知して甲状腺を刺激するホルモンTSHを出します。それによって甲状腺ホルモンが十分に作られると、脳がそれを感知してTSHを少なくします。

 

つまりTSHが高い状態=甲状腺ホルモンが少ない状態。TSHが正常範囲=甲状腺ホルモンが適正な状態。TSHが低すぎる状態=甲状腺ホルモンが多すぎる状態。ということになります。

 

甲状腺ホルモンに異常があると、不妊症や流産になりやすくなります。不妊症の女性の10人に1人に甲状腺ホルモンが不足しているとされています。また胎児の発育に欠かすことのできないホルモンなので、妊娠中に不足していると胎児の発育に影響が出たり、流産になったりするのです。

 

ですから妊娠を希望している人で甲状腺ホルモンが不足している場合は、妊娠する前から甲状腺ホルモンを補充して妊娠しやすくして、さらに妊娠中、特に胎児がまだ自分でホルモンを作ることのできない初期の間は、甲状腺ホルモンを補充することが重要になります。

 

甲状腺ホルモンが不足しているかどうかを調べるためには、甲状腺ホルモン自体よりもTSHの方が敏感に変化するためTSHを先に調べる方が良いとされています。TSHの正常値は検査会社によって多少違いますがだいたい0.5〜5.0ぐらいの数値になります。ということは先に説明しました通りTSHが5.0以上では甲状腺ホルモンが不足しているということになるのですが……

 

ところがこの正常値というのは、自分一人が生きていくための正常値なのです。妊娠を希望している人、妊娠中の人は、自分一人ではなく赤ちゃんにまわす分までの甲状腺ホルモンが必要なのです。つまり不妊症、妊娠初期の女性の正常値はもっと厳しいもので、TSHが2.5以下が正常、ということになっています。

 

TSHが2.5以上の人は、甲状腺ホルモンの薬(チラーヂン)を妊娠前から服用し、妊娠初期の間続けるのが良いとされています。これによって妊娠しやすくもなりますし、チラーヂンは特に副作用もない薬なので安心して飲むことができます。もちろん市販薬ではなく病院で出す薬なので私が処方するわけですが。