「わたしは、アテナイ人諸君よ、君たちに対して、切実な愛情をいだいている。しかし、わたしが命に従うのは、むしろ神に対してであって諸君にではないだろう。すなわちわたしの息の続くかぎり、わたしにそれができるかぎり、決して知を愛し求めることをやめないだろう。わたしは諸君に勧告し、いつ誰に会っても、諸君に指摘することをやめないだろう。
 そしてその時のわたしの言葉は、いつもの言葉と変わりはしない。世にもすぐれた人よ、君はアテナイという、知力においても、武力においても、最も評判の高い、偉大なポリス(市民国家)の一員でありながら、ただ金銭を、できるだけ多く自分のものにしたいというようなことに気をつかっていて、恥ずかしくはないのか。
 評判や地位のことは気にしても、思慮と真実には気をつかわず、たましい(いのちそのもの)を、できるだけすぐれたよいものにするように、心を用いることもしないというのは、、、

ソクラテスの弁明