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交通事故の場合、追突事故でもない限り、必ず、この過失相殺が問題になる。ここに「過失」とは、「つい、うっかりした」という意味での過失ではなく、全部を加害者の責任にしちゃおかしいだろう、という意味での損害の公平な分担要素をさす。

ただ、損害をどのように割り振るのが損害の公平な分担と言えるかとなると、これは、もう各人の直観によるしかない。つまり、判断者の価値観に左右され、いくらでも、結論が異なる。

そこで、実務では、過失割合の基準を定め、こういう場合は、この割合と定めている。ただ、一律にその割合というのも不都合なので、それぞれの基準に修正要素を設けている。

問題は、どこまでが修正要素に該当するということである。というのは、過失割合を定めるのに、すでに一定の過失は織り込み済みで、この「基準では織り込まれていない事項」のみが、過失割合に修正要素になるからである。

例えば、[前方不注視]。これなんか、考えようによっては、「つい、うっかり」のレベルを超えて重過失といえなくもないが、前方不注視がなければ事故は起きないから、通常レベルでの前方不注視は、基本の過失相殺率に織り込み済みである。

しかし、スマートフォンを操作しながら運転した場合なんかは、基本の過失相殺率に織り込み済みとは言えない。修正要素に該当する。これは、前方をよく見ていなかったというレベルではないからである。

「著しい過失」や「重過失」も同様である。事故を起こすこと自体が、すでに「著しい過失」や「重過失」があることになる。しかし、普通の過失は、すでに基準表に織り込み済みで、修正要素としての「著しい過失」や「重過失」は、基準表が想定していない過失でなければならない。例えば、酒酔い運転や無免許運転、30km以上の速度違反、これは、もう完全に修正要素としての「著しい過失」や「重過失」にあたる。

逆に、例えば、見通しのいい場所での事故だとしても、それは基本相殺率に織り込み済みで、この程度では「著しい過失」や「重過失」に該当しない。

結局、過失の中でも、「これはひどい、特別だ」というレベルでなければならないが、具体的な認定になると、かなり微妙である。

さらに同じ修正要素でも、色々な場合がある。たとえが「夜間」。山道の街灯もないような真っ暗な道なら問題はないが、都会の夜で街が充分明るいときなんか、修正要素と言えるか。日没直後のまだ十分明るい時間帯はどうか。こういう状況を、ひとまとめで「夜間」として、一律に修正してよいのか、難しい問題がある。