「風の盆」 | 閑話休題

「風の盆」

 今日から9月に入る。そして9月3日までの3日間、越中富山八尾では、「風の盆」の踊りが始まる。いい踊りである。

 全国には阿波踊り・土佐よさこい祭り・河内盆踊り・郡上踊り・花笠おどりなど、それぞれ個性ある祭りがある。その中で私が一番好きなのは、この八尾の「風の盆」の踊りである。

 唄も和歌調の調べ、それに三味線のほか、他所の祭りでは見られない胡弓の音が、「風の盆」独特の哀調を醸し出す。踊りも女は揃いの浴衣に菅笠を深く被り、混じって男は野良仕事風の絣を着て、男女とも情趣をこめて静かに踊る。賑やかさはないが,華やぎ゛に溢れた踊りである。誰が振り付けをしたのか知らないが、素晴らしい踊りで私は日本一と称えたい。

 

 それに八尾という土地は、富山県の辺境であり、さして広い平野もない。焼畑に始まり、田圃の耕作でやっと稲が植えられた地である。

此処に住み着いた先祖は、広い富山平野に新しい耕地が開けなかったため、この辺境に住み着いたのだろう。ということは遅く入って来た入植民であったことを示している。だがその民が和歌をこなし、踊りに三味線に加えて、胡弓を取り入れたというのは驚きで、全国にそんな例が無い。

 三味線は17世紀沖縄から伝えられており、シナの胡弓もその頃伝わっていたともいわれるが、三味線は忽ち全国の色街に伝わったが、なぜか胡弓の普及はあまり見られない。しかも静かな踊りの様子は、琉球王朝の踊りを伝えたものという説もある。しかし琉球伝来にせよ、日本の和歌が踊りの音頭となっている。「風の盆」の伝統の不思議さは解けないが、日本的な優雅な夏の盆踊りである。

 

 からり以前、ある会合でスピーチをした韓国の領事が、「日本に来て初めて盆踊りを見てびっくりした。村を挙げて踊ることは韓国では見られない。これで日本がいざという時に、村ぐるみから国ぐるみになることが分かった」という話をされていた。世界的にも村挙げての踊りは少ない。盆踊りは日本独特の夏の風物詩である。

 八尾に住む老人は、「なんでもええ。いいところに生まれて来たもんだよ」と言っていたのが記憶に残る。日本はいい所だよね。