私の愛した詩人 2 国木田独歩 | 閑話休題

 私の愛した詩人 2   国木田独歩

 

     山林に自由存す

   山林に自由存す

   われ此句を吟じて血の沸くを覚ゆ

   嗚呼山林に自由存す
   いかなれば我山林をみすてし

 

   あくがれて虚栄の途にのぼりしよの

   十年の月日塵のうちに過ぎぬ

   ふりさけ見れば自由の里は

   すでに雲山千里の外にある心地す

 

   眥―まなじり―を決して天外を望めば  

   をちかたの高嶺の雪の朝日影

   嗚呼山林に自由存す

   われこの句を吟じて血のわくを覚ゆ

 

   なつかしきわが故郷は何処ぞや

   彼処にわれは山林の児なりき

   顧みれば千里江山

   自由の郷は雲底に没せんとす