【 岩崎大輔・森健「連合」は誰の味方なのか 神津里季生会長に聞く】を読んで | 長谷川哲の言いたい放題

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【 塩田亮吾 「連合」は誰の味方なのか 神津里季生会長に聞く】12/26(月) 9:22 配信 を読む

記事は以下、URLより

http://news.yahoo.co.jp/feature/467

著者の塩田亮吾氏は、連合神津会長とのやりとりを幾つか紹介したあと、次のように書いている。

《連合=日本労働組合総連合会は、労働者側の権利を主張する日本最大の労働組合の組織である。》

私はこの部分には全く同意できない。「連合」のどこが「労働者側の権利を主張する(日本最大の)労働組合(の組織)」なんだろうか?「労使協調」で「労働者側の権利をしばしば放棄する労働組合」というのなら私は同意できるのだがな。

おまけに、《おもに大企業の労組が加盟しており、賃上げや労働環境の改善などで労働者を代表して経営者(使用者)側と交渉するのが大きな役割だ。毎年1~2月、連合は労働者の意思を代表して、経営者団体の日本経済団体連合会(経団連)と賃上げについて話し合い、加盟労組が各企業と賃上げ交渉をする。春季労使交渉(春闘)という毎年恒例の行事だ。》

細かいことのようだが、「春季労使交渉」なら、それは春「交」であって、春「闘」と略すのは不自然ではないか。そのあと、「連合」に結集したナショナルセンターについて、総評を日本労働組合総評議会、同盟を全日本労働総同盟、中立労連を中立労働組合連絡会議、新産別を(全国産業別労働組合連合、自治労を全日本自治団体労働組合……と、極めて正確に書いて、略称の由来をちゃんと書いているのだから、「春季労使交渉」はあくまで「春交」と書くべきではなかろうか?

連合の組合員が増加した理由として、神津会長は次のように答えている。

《それぞれの組織の努力の賜物です。連合本部や地方連合会(都道府県単位の連合の地方支部)の取り組みとして有効だったのは、“労働相談ダイヤル”です。この電話にパワハラ、セクハラ、マタハラといった相談がいっぱい来るわけです。昨年は年間1万6000件。たとえば不当解雇と思われるケースなら、地方連合会が「これは不当解雇だから、ちゃんと権利を主張すべきです」と助言をし、一緒に問題解決を図りましょうと働きかけた。そうしたサポートをする中で組合員が増えています。》「ちゃんと権利を主張すべきです」か。後述するように、連合は、その構成員に対して、憲法で保障された「思想信条の自由」の権利に含まれる、「政党支持の自由」を「ちゃんと主張する」組合員に対して、ひどく差別的なんだから、盗人猛々しいというか厚顔無恥というか、あきれ返る。

神津里季生(こうづ・りきお)1956年、東京都生まれ。東京大学在学中は野球部マネジャー。卒業後、新日本製鐵株式会社入社。専従役員になって以降、在タイ日本大使館一等書記官、新日鐵労連会長、基幹労連中央執行委員長などを経て、2015年10月より現職。(※ここまで写真のキャプション)
神津里季生氏は、鉄鋼業の出身だ。東京大学卒業後、1979年新日本製鐵(現・新日鐵住金)入社。1984年から組合の専従(組合の業務だけを行う)となった。2013年に連合事務局長(専従)、そして2015年10月から同会長を務める。(※同じことを何度もくどい。)

記事は、神津氏の略歴をこのように紹介したあと、神津氏を以下のように持ち上げる。

《神津会長の方針はきわめて現実的だ。就任後、安倍政権が掲げたGDP(国内総生産)600兆円の目標について、「絵に描いた餅」と批判するとともに、安倍政権が期待した春闘での3~5%という高めの賃上げ要求も「非現実的」とし、2%のベースアップ(通称ベア。基本給の賃上げ)要求という方針を決定した。政府が高い賃上げを推奨しているのに、労組の代表が低く要求するというねじれた事態。この神津会長の決定に対し、麻生太郎財務相は「3~4%の賃上げを要求するのが当然なのに」と神津体制を批判した。
だが、神津体制の方針は賃上げというときに、ボーナスなどの一時金で対応することは反対だった。通常、ベースアップというときに取りざたされるのは、ある産業の中心企業である。自動車であればトヨタやホンダ、日産に目が向けられる。だが、アベノミクスでそうした中心企業が賃上げをしても、子会社や中小企業、そして非正規雇用の労働者の賃金はあまり増えていなかった。そこで神津執行部は、それぞれの産業のピラミッドにおける下位組織までを対象とした「底上げ(賃上げ)」を図っていった。》これでは、神津氏が安倍政権と真っ向から対峙しているような印象になるが、神津氏は上の略歴にもあるように在タイ日本大使館一等書記官や、官邸の「働き方改革実現会議」のメンバーでもある。政権や与党と「ズブズブ」なのだ。

そして、中小企業の問題についての発言が続いたあと、こんな発言になる。

《──そういう場合、個人加盟できる労組もありますよね。
たしかにありますが、加盟しても労使関係の協議まですぐには持ち込める力がないところがほとんどです。だから、僕ら「連合」がもっとやらなくちゃいけない。そこで今年になって意識的に、各地の中小企業の経営者と直接、話しています。みなさん「正直、私たちも賃金を上げたい」と言うが、同時に「だが、それを妨げる問題もある」とも言う。その問題の一つは大手とグループ会社の関係です。だから連合も政策を考え、ともに課題を解決していきましょうと。実際に、そうした中小の会社では、連合の助言のもと、組合を新たにつくるに至ったところもあります。
──中小の経営者の立場として見ると、連合に労組までつくってもらうというのは、やや不思議に感じます。
でも、中小に組合がないとすれば、僕らが中小の社員に代わって賃金のあるべき姿を見せていかないといけないのかなと思います。》

いったい誰のための労働組合なんだろう。「中小企業の経営者と直接、話し」て作った労働組合が、冒頭に筆者が書いているように「労働者側の権利を主張する」ことができるとは、私にはどうしても思えないのだ。

インタビューは、ついに喫緊の課題、野党共闘にすすむ。

【引用ここから】

──去る10月末、神津会長は自民党の二階俊博幹事長と会食の機会をもちました。それが報道されると、「連合は自民党に軸足を移しているのか」と一部から批判も出ています。

いや、そんな大げさな話じゃありません。僕らは働く者の政策を、各政党、与党でも野党でも説明してきています。共産党は除きますが。ところが自民党とは、民主党が政権を取った2009年から、ボタンの掛け違いもあって疎遠になってしまった。僕としては、自民党との関係を元に戻したかった。それで1カ月半ほど前に、旧知の森英介さん(自民・元法相)に頼んで、二階さんと話をさせてもらう場をつくってもらったんです。

【引用ここまで】

なぜ、共産党を除くのか?なぜ疎遠になった「自民党との関係」を「元に戻したかった」のか?は、一切触れられていない。

記事はこう続く。

【引用ここから】

──今年7月の参議院選挙では民進党と共産党が一人区の32選挙区で協力しました。の一人区で候補を立てず、そこでの野党票が民進党へ流れた結果、一人区は3年前の参院選での2勝29敗から11勝21敗と民進・共産は大幅に当選数を増やしました。しかし、連合は、こうした民進党と共産党との選挙協力、野党共闘に「(共産党は)理念が異なる」と否定的なコメントを寄せました。なぜですか?

小選挙区でそれぞれ候補者が出れば票が割れる。それが野党の候補に不利なことは間違いない。だから、候補を一本化して政治の世界で成り立つのなら、それはどうぞやってくださいと言うしかない。問題は、僕ら連合がその候補と政策協定が結べるかです。政策が合えば推薦もするし、応援もする。ただ、選挙協力の現場に出てくる市民団体のみなさんは、僕らとやっていける人なのかどうか。実は中身は純粋な市民団体ではなく、地域の共産党員の方なのか……。地域によって、全然違いますからね。

【引用ここまで】

これは、市民団体の人々に対して失礼なレッテリングである。日本共産党は、随分昔から、市民のなかで活動することを規約に明記してきたが、それは、とりもなおさず、国民の苦難に寄り添い、解決や軽減をめざすという「立党の精神」によるものであり、結果として共産党員が市民運動の先頭にたって頑張ることは起こりうる。それをもって、市民運動を色分けするのは、いかがなものか。

インタビューはこう続く。

【引用ここから】

──やはり共産党とは手を結べない。

そこは一線を画します。共産党は連合に対して、歴史的に攻撃してきたとか、あるいは強い影響を与えようとしてきた存在ですから。
連合結成の時も「共産党を支持したい」と離れていった人たちがいる。そうした人たちが「統一戦線促進労働組合懇談会(統一労組懇)」という(共産党系の)組織に合流してできたのが「全国労働組合総連合(全労連)」。僕ら連合の路線とまったく違うのです。
だから、選挙の現場で一生懸命やっている人からすると、志位(和夫共産党委員長)さんと僕ら応援する候補者が握手するなんて耐えられない。選挙事務所で共産党の人と一緒にやることも耐えられない。

【引用ここまで】

これは、明らかに事実関係を捻じ曲げている。

共産党が批判してきたのは、旧総評による組合員に対する社会党1党支持押し付け、旧同盟による民社党1党支持押し付け、連合による民主党あるいは民進党支持押し付けである。組合加入によって、政党支持の自由が奪われるのであれば、共産党支持者に限らず、自民党や公明党の支持者も、労働組合によって「労働者の権利を守られる」ことから排除されてしまうではないか!統一労組懇(全労連)を結成したのは、神津氏が言うような「共産党を支持したい」人々だけでなく、労組によって政党支持を「押し付けられる」のを望まない人たちで、神津氏の発言は全く的外れだ。

神津氏は、野党共闘についてもこう語る。
《僕はね、“共闘”という言葉に違和感をもっている。“共闘”というのは文字通り政策も合わせていくことでしょう。しかし、共産党と同じ政策なんてできるのか。
消費税とか社会保障、さらに言えば、天皇制や自衛隊への考え方。国の在り方に関わる根本がまったく違うでしょう。なのに、形だけ協定を結んで、お互いに推薦し合うのは欺瞞だと思っている。それが“共闘”なんですか、と。》

志位さんや小池さんが天皇制や自衛隊に対する共産党独自の考えを、共闘の前提としないことを何度も発信しているんですが、それは全力で無視ですか?結局、「共産党とは組めない」という「結論ありき」の後付で理由にしか読めません。

更に神津氏はこう述べる。

《僕らは労働組合ですから、政治に対しては、あくまでも応援団です。民進党がもっと大きく強くなり、世間にアピールし、ファンを増やしてくれ、という立場でしかない。》「民進党がもっと大きく強くなり、世間にアピールし、ファンを増やす」そんな時代が来るとは思えないのだがなあ。連合におんぶに抱っこで依存しまくっている間は。

神津氏は最後にこう述べている。

《連合はすべての労働者の思いを代弁しなきゃいけない。》ならば、規約に次のように定めている共産党と要求は一致できるハズである。

【日本共産党規約より】

第二条 日本共産党は、日本の労働者階級の党であると同時に、日本国民の党であり、民主主義、独立、平和、国民生活の向上、そして日本の進歩的未来のために努力しようとするすべての人びとにその門戸を開いている。
 党は、創立以来の「国民が主人公」の信条に立ち、つねに国民の切実な利益の実現と社会進歩の促進のためにたたかい、日本社会のなかで不屈の先進的な役割をはたすことを、自らの責務として自覚している。終局の目標として、人間による人間の搾取もなく、抑圧も戦争もない、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会の実現をめざす。
 党は、科学的社会主義を理論的な基礎とする。

【引用ここまで】

連合が日本共産党を頑なに拒絶する理由が、このインタビューを読む限り、私はさっぱりわからない。