5月最後の日、隣町珈琲主催の「魂を鎮める芸能 能楽講座」に行ってきました。
講師は、能楽師の安田登さん。
ゲストに、浪曲師の玉川奈々福さん、琵琶奏者の塩高和之さんを迎えて、平家物語と耳なし芳一を語るという。
会場は美容室の地下。
冥界下りのように階段を降りていくと、素敵なお嬢さんが飲み物をサーブしてくれる。
木のスツールが並ぶ地下室は人がいっぱい。(渋谷ジャンジャンみたい)
そして、手をのばせば触れそうな距離に演者の方々がいる。比喩ではなくて。
近い。濃密。わくわく。
初めて間近に見る薩摩琵琶。(ヴァン・ヘイレン風にこっそり改造された)
圧巻は、安田さんと奈々福さんが語る「耳なし芳一」。
琵琶の音が、あるときは平家の亡霊武者の足音になり、あるときは芳一が奏でる平曲となる。
この物語、ラフカディオ・ハーンの英文をお二人で和訳したものだという。
琵琶の残響があの世感を醸しだし(奈々福さんの表現)、地下室は壇の浦に変わる。
ああ、きてよかったな!
偶然このイベントにたどり着いた自分、えらいぞ。
物語が終わっても、まだ感動は続く。
そのあとは、刮目のトークが待っていた。
奈々福さんによる、新解釈 「耳なし芳一」 。
いきますよ、みなさん、ついてきてくださいね。箇条書きですが。
・貧しい生まれの芳一は住職の稚児であった。(おそらく)
・その琵琶の才で霊を招くことのできる少年、芳一。
・「7日間、平家物語を語ってくれ」と頼む亡霊の真意は、「7日続ければ成仏できる」(ってことでは?)
→住職が邪魔したせいで成仏できなかった。(ダメじゃん!)
・住職は芳一の神のような才能に実は嫉妬していた。(のではないか)
・経の書き忘れは故意であった。(にちがいない)
・耳を失くした芳一は、霊界と繋がる力もなくす。
・能力をなくした芳一の琵琶は一般人にもわかるレベルに落ち、結果大人気&大金持ちになる。
だいたいこんな文脈であったかと思う。
どうですか、みなさま、この解釈。
本当は怖い耳なし芳一ですね! いや、もとから怖いですが。怖さの種類がちがーーーう!
最後にもうひとつ。
音楽とは、音を楽しむものではない。
日本ではもともとは、霊を招くものが音楽でした。(安田先生談)
その証拠に 「樂」
の字の中の「白」は、しゃれこうべの意味。
木の上に頭骸骨があり、それを打つというのが「楽」の由来だそうです。
異界にあそぶような自在で濃密、しあわせな2時間でした。
安田先生にサインをいただきました。