年金の差押は違法なのか?前編 | エリオット波動とフィボナッチ比率で相場を綱渡り

エリオット波動とフィボナッチ比率で相場を綱渡り

エリオット波動とフィボナッチ比率を利用して、相場の転換点をピンポイントで狙っていきます。エリオット波動については、基本から応用まで書いていく予定です。

今日は、まったく相場とは関係ない内容なので、興味のない方はスルーしてください。

いただいた質問はこちらですね。
『当支店のお客様がATMで、預金を払戻ししようとしたが、残高不足で出来なかった。
年金が振り込まれているはずなのでおかしいとのクレームが窓口にありました。
調べてみると、年金は振り込まれていたが、振込後に某県税事務所より差押されていたことが判明しました。
その経緯を説明すると、年金は差押えてはいけないことになっているはずだ。
それにも関わらず、差押に応じたのは当行の過失である。よって、その損失を補填して欲しいとの要求を受けました。
調べてみると、民事執行法第152条に次のような規定がありました。
「1.次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。①債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権」
これを読むと、年金の金額のうち75%は差押えてはいかないと読めます。にもかかかわらず、年金の半額以上を差押えた県税事務所の行為は、違法なのでしょうか?そしてその違法行為に加担したことに当行の過失があるのでしょうか?』

質問を整理すると
①年金を差押えた県税事務所の行為は違法なのか?
②金融機関に過失はあるのか?
の2点になると思われます。

『年金を差押えることが違法なのか?』
これについて解説します。
まず、民事による差押えと行政機関の行う差押えについて同じではありません。
質問に書かれた民事執行法に規定された「差押禁止債権」の規定は、民事債権に適用される法律になります。
県税事務所が行った差押は、国税徴収法に基づく行為になります。
ただ、この国税徴収法にも当然「差押禁止債権」の規定はあります。
第76条及び第77条において、差押えを禁止される金額の計算方法が細かく規定されています。民事執行法のように単純に4分の3ではありません。
この計算方法については、今回は割愛します。
まぁ、民事債権と同様に年金全額を差押えることは禁止されていることを理解してくれればOKです。

質問から見ると、最初に説明しなければならないのは
『年金の振り込まれた口座から預金を差押えた行為は、年金を差押えたことになるのか?』
ということです。ここが一番の問題点にもなるのですが…

法律によって禁止されているのは、「年金の支払い請求権」という債権であって、概念上のものになります。
現実にどこどこの銀行ある預金ではありません。

預金というのは、個人と銀行の間で民法上の消費寄託契約(民法657条)によって、個人が銀行に寄託したお金ということになります。
そして、寄託した個人はいつでもそれを払い戻す権利を持っていることになります。
この「自分が預けたものを返してくれよ」という権利を「預金払戻し請求権」と言います。

普段何気なく、銀行で口座を開設してATMでお金を引き出してるのは、こういった法律関係が背景に実はあります。

ここで本題に戻りますが、県税事務所が差押えたのは、形式上で言うと年金ではありません。
これは、我々の民事債権でも同様ですね。

差押えたのは、個人が銀行に対してもっている「預金払戻し請求権」です。
個人が年金事務所に対して持っている「年金の請求権」ではありません。

法律で禁止しているのは、この後者の年金です。
つまり、法律ではこの「預金払戻し請求権」は、差押えを禁止されているわけではないのです。
となると、預金全額を差押えすることも可能なのか?
基本的には、可能だと考えます。

つまり、年金は銀行に振りこまれた時点で、年金から預金に変わり、その預金は差押えを禁止されていない。
ということになります。これを年金の預金債権への転換と言います。

これについては、同様の事例での最高裁の判決があります。
最高裁平成10年2月10日判決です。
金融機関が預金者に対して有する債権を自動債権とし、預金者の口座への国民年金及び労災保険金の振込にかかる預金債権を受動債権として相殺しました事案です。
これに対し、最高裁は以下の判決を出しました。
『国民年金及び労災保険金の預金口座への振込にかかる預金債権は、原則として差押禁止債権としての属性を承継するものではなく、金融機関が預金者に対して有する債権を自動債権とし、預金債権を受動債権として相殺することが許されないとはいえない。』

つまり、預金債権になった時点で、それは年金ではなく預金である。としたのです。

しかしながら、現代の社会ではお金の支払いの殆どが金融機関の預金を経由して、経済活動が行われているのが現状です。
ところが、預金債権の差押えは禁止されていないということで、法文上の差押禁止規定が形骸化し、事実上意味のないものになっていたのです。
ただ、コンビニATMの展開により、銀行窓口が開いてからしか差押えできないという債権者をあざ笑うかのように、早朝に全額をコンビニATMで下ろしてしまうことが可能になり、預金債権の差押えも困難な状況も生まれてはいます。
こんな状況の中で、この最高裁の判決とは異なる判決が出された事件が、平成20年に鳥取で起きます。

続きは、また来週のメールで回答します。