今日は、メッセージで相談のあった件について解説します。
相談の趣旨は、「S子さんは、別れた彼氏に10万円を貸していた。でも返してくれないので、勝手に部屋に置いていったノートPCを中古ショップで売却して良いか?」という内容ですね。
これは民法上の「相殺」という制度の問題です。
債務者が債権者に対して同種の債権を有する場合に、その債権と債務を対当額において消滅させる単独の意思表示のことです。
これだとまだわかりにくいので、解説をしていきます。
桜井君が大野君に100万円を借りていたとします。
大野君は、桜井君に100万円を払えという債権を持っている訳です。
その後
大野君が桜井君に50万円を借りたとします。
桜井くんは、大野君に50万円を払えという債権を持った訳です。
ここで、それぞれが100万円と50万円を払えばいいのですが、ここで50万円分の債権債務を消滅させて
大野君の50万円の債権だけが残るというのが相殺という制度ですね。
弁済期というそれぞれの返済期限の問題もありますが、これはどちらかの一方の意思表示で成立します。
桜井君が「僕の50万円の債権と大野君の持っている100万円の債権のうち50万円を相殺するね」
と言えばそれで成立です。
この成立要件としては
「同一当事者間に同一の目的を持つ債権債務があり、相殺を言い出した人の債権が弁済期に達していること。」です。
では、今回の相談がこれに該当するのか?
S子さんは、元カレに10万円を払えという債権を持っていますね。
これに対し、元カレはS子さんに何らかの債権を持っているのでしょうか?
部屋においてあるPCを引き渡せという債権を持っていると言えるように思います。
これを同種の債権というには、少し厳しいのではないかと思います。
では、このPCを勝ってに売却して、その代金にしてはどうか?という質問ですが
他人の所有物を他の者が勝手に処分するのは、マズイですよねー
これは、自分が相手に対して債権を持っているので正当化されるようなイメージがありますが、これは駄目ですね。
日本では自力救済は認められていませんので、これは不法行為になってしまいます。
同じような話でよくあるのが、家賃を払わない部屋の鍵を大家が勝手に替えてしまうという話があるのですが
これも一見正当化されるように見えるのですが、鍵を変えるというのは不法行為です。
では、仮にこれが不法行為だとしても、不法行為に基づく損害賠償請求権を相手が持つだけなので
元々自分の持っていた10万円という債権と相手の持つ損害賠償請求権を相殺すればいいのでは?
ところが、これは相手の持っている債権(これを受動債権と言います)が不法行為に基づく債権の場合は、相殺できないとされています。
以上のことから、結論としては、「やっちゃ駄目」ということになります。
勿論元カレと話ができて、「売った代金分を10万円と相殺してくれ」と元カレから意思表示してくれれば問題ありませんね。