令和4年度公営企業決算特別委員会

【交通局】決算について、経営改善と都民サービスの充実に向けて質疑を行いました。


2023年10月23日 もり愛


令和4年度決算は、『東京都交通局経営計画2022』が作成され、計画の初年度となります。都営交通は、都民生活を支える公共交通機関として重要な役割を担っております。

まず、「交通事業会計」について、質問します。



(自動車運送事業・都営バス)令和元年度には、1日360万人の利用者から、コロナ禍の令和2年度は約253万人まで利用者の減少が顕著でしたが、令和4年度においては利用者数の推移では回復傾向がみられます。


Q1〉自動車運送事業の「経常収支」は、3年度は56億4千7百万円の赤字から、4年度は17億7千9百万円の赤字と赤字が縮小しましたが、その要因について、伺います。


交通局答弁A1〉

・令和4年度の自動車運送事業の経常収支は、前年度に比べ38億6,800万円改善

・主な要因は、乗車料収入が28億8,500万円増加、減価償却費が7億6,400万円減少


もり愛〉さらにバスの2024年問題への対応も求められます。バス運転手の年間の労働時間の上限が現在の3380時間から3300時間に引き下げられ、退勤から出社までの休息時間が現在の「8時間」から「11時間が基本、最低9時間」となります。


これは、運転手の労働環境の改善にはつながり、評価する一方で、いままでの路線を維持するにはより多くの運転手を確保する必要があり、日本バス協会の試算によると、2030年にはバスの運転手が3万6000人不足するとの試算がある中で、


Q2〉都営交通としてどの様に運転手の確保を行ってきたのか、令和4年度の取り組みを伺います。


交通局答弁A2〉

・バス乗務員の確保に向けては、採用PRの充実や採用時の年齢要件の拡大、大型二種免許の未取得者に対して免許取得を支援する養成型選考などを実施


もり愛〉 平成13年版の運転免許統計では10~20代の保有者数は1,742万7,185人との数字が、令和3年度版運転免許統計によると、10代・20代の運転免許保有者数は1,087万5,494人と、この20年で免許取得者の数は半減している背景もあり、今後のバス乗務員の確保に向けては、養成型選考の充実を求めます。


都営バスでも全体の4分の1余りにあたる36路線で減便を実施したと聞いています。


経営改善の手法として、減便だけが、赤字の解消ではないと考えます。特に、都営交通は、公共インフラとして、昨今、高齢ドライバーの事故に幼い子どもが巻き込まれる悲劇も後を絶たず、都として、免許の返納を促すためにも、福祉の視点からも、採算が取れなくても維持すべき生活路線もあると思います。


Q3〉減便の実施に際して、どのくらいの都民が影響を受けたのか、十分に地域住民の声を聴く機会は設けられたのか、どの様な声が寄せられたのか、伺います。


交通局答弁A3〉

・減便にあたっては、お客様の利便性に最大限配慮し、ほとんどの路線について、ご利用が多い時間帯の運行間隔を変えずに維持するか、あるいは運行間隔を拡大しても3分程度の拡大にとどめるなど、影響をできる限り抑制

・ダイヤの見直しにあたっては、日々の運行実績の分析、利用状況の変化やお客様から寄せられた声などについて、全ての営業所からヒアリングを実施

・なお、お客様からは、時刻等の問い合わせが数件よせられた。


もり愛〉減便にあたっては、全ての営業所からヒアリングを実施し、影響を出来る限り抑制したとの答弁を頂きました。都民の生活の足への影響に際して、引き続き、地域住民の声に寄り添う対応を、要望いたします。


運転手の処遇の改善は常に行われていると考えますが、今後の2024年問題を迎えて、

Q4〉経営改善にむけて、早期の黒字化と経費削減、乗車料収入の増加をどの様に図っていくのか、伺います。


交通局答弁A4〉

・都営バスでは、経営改善に向け、収入、支出の両面から様々な取組を実施

・支出面ではこれまでも、民間事業者への営業所の管理の委託や現業系職員の給与水準の見直しにより、人件費の削減を実施

・さらに、コロナ禍による収支の悪化を受け、営業所の水道光熱費などの経常的経費や、車両の更新などの投資的経費について幅広く見直しを実施

・一方、収入面では、需要や乗客潮流の変化を的確に捉え、需要が高まっている地域においては、路線やダイヤを増強するとともに、大規模な集客施設等とのタイアップや、広報誌の発行などにより沿線の魅力をPRし、需要を創出

・引き続き、こうした取組を着実に進め、収支を改善。


もり愛〉都営バスにおける、収支の改善に向けた様々な取り組みについてご答弁を頂きました。

一方で、駅から離れた交通不便地域等、交通弱者を生み出さない取り組みと共に、バスだからこそ行ける場所もあり、そうした沿線の魅力をPRして頂き、一層の収支改善に引き続き取り組んでいただきたいです。


(さくらトラム)

Q5

軌道事業(東京さくらトラム(都電荒川線))の「経常収支」は、3年度は1億8千9百万円の赤字から、4年度は1億5千9百万円の黒字へと転換していますが、その要因について、伺います。

交通局答弁A5〉

・令和4年度の軌道事業の経常収支は、前年度に比べ3億4,800万円改善

・主な要因は、乗車料収入が2億1,800万円増加、減価償却費が7,000万円減少


(とねりライナー) 

Q6

新交通事業(日暮里・舎人ライナー)の「経常収支」は、3年度は8億4千8百万円の赤字から、4年度は2億1千2百万円の赤字と赤字が縮小しましたが、その要因について、伺います。

A6

・令和4年度の新交通事業の経常収支は、前年度に比べ6億3,600万円改善

・主な要因は、乗車料収入が5億1,700万円増加、減価償却費が2億7,400万円減少


もり愛〉また、2021年10月、震度5強の揺れを観測した足立区で、日暮里・舎人ライナーが、緊急停止をする際、脱輪し、乗客8人がけがをした事故に関して、2023年2月16日に国の運輸安全委員会調査報告書をまとめましたが、


Q7〉局が講じた事故の対策とその費用を伺います。


交通局答弁A7〉

・脱輪事故を踏まえ、局独自の減災対策として、令和3年度に、緊急地震速報を受信した際に自動停止する機能の追加工事として、約250万円を支出

・また、令和4年度は、走行路から脱輪した場合の衝撃を緩和するための工事について、約3,000万円を支出

・さらに、本年2月の運輸安全委員会からの勧告を受け、速やかに乗客の避難誘導の手順を整理し、改定した異常時対応マニュアルに基づく訓練を実施

・あわせて、事故現場付近の施設において地震の影響による脱輪を防止するため、第三者機関を活用し、現在、対策を検討


もり愛〉都営交通は、地下鉄や高架鉄道等もあり、避難誘導に際しては、地元自治体との連携も欠かせないと考えます。ガイドラインやマニュアル等、

現在第3者機関を活用した対策を検討中とのことですので、地元自治体とも連携しながら、対策の強化に取り組んでいただきたいと要望します。


〇次に、「高速電車事業会計」について、質問します。


(高速電車事業・都営地下鉄)

Q8〉高速電車事業(都営地下鉄)の「経常収支」は、3年度は64億3千5百万円の赤字から、4年度は4億4千8百万円の赤字と赤字が縮小しましたが、その要因について、伺います。


交通局答弁A8〉

・令和4年度の高速電車事業の経常収支は、前年度に比べ59億8,800万円改善

・主な要因は、乗車料収入が135億5,500万円増加、一方で動力費などの経費が59億6,000万円増加、減価償却費が14億8,400万円増加


もり愛〉経営計画2022の中で、高速電車事業の課題と今後の経営の方向のなかで、車両、信号保安設備の更新や浅草線及び三田線の老朽化対策など、今後も大規模な投資が控えているとしています。


Q9〉地下鉄の経常収支は令和2年度から令和4年度まで赤字が続いており、大規模な投資を実行していくためには、収支の改善が必要と考えますが、今後の経常収支の見通しについて見解を伺います。


交通局答弁A9〉

・経営計画2022の収支見通しでは、経常収支は令和5年度に黒字化し、その後100億円前後の黒字で推移する見込み

・また、電気料金や物価の上昇等が継続した場合、将来の経常収支はより厳しくなるものと見込まれ、引き続き収支両面にわたり経営改善に努力


もり愛〉都営交通における、情報アクセシビリティについて伺います。

東京2020パラリンピック開催地であり、2025年にデフリンピックを開催する都として、また、手話言語条例を制定し、合理的配慮の一層の充実が求められ、フラッシュライト等、障がいのある方もない方も、文字、音、光等、誰もが利用しやすい環境整備が求められます。

都営地下鉄の駅には、駅構内の設備を点字や音声で案内する「蝕知案内板」なども設置されていますが、車内における案内情報の充実も重要です、そこで、

Q10地下鉄車両における情報アクセシビリティについて、令和4年度の整備状況を伺います。


交通局答弁A10〉

・都営地下鉄では、車両の更新に合わせ、ドアの開閉をお知らせする表示灯や多言語対応の車内液晶モニターを新たに設置するなど案内情報の充実を図ることとしており、令和4年度は、これらの機能を有した車両19編成を導入


もり愛〉ホームドアの設置については、令和4年度に4駅で設置され、都営線全線で整備が完了したとの答弁がありました。一方で、デフリンピックを迎えるにあたり、フラッシュライト等、光を用いた情報アクセシビリティの整備はまだ限定的です。

建設局等、局横断的に、一層の整備が進むよう、取り組みの推進を要望します。


次に、都営交通の広告料収入について伺います。

都営交通には、地下鉄の車内広告、ラッピングバス、広告付きバス停、駅構内のデジタルサイネージ等、広告媒体があります。

決算額で25億円、うち、7割が地下鉄、2割がバスであると伺いました。


Q11〉令和4年度の広告料収入確保のための取り組みについて、伺います。


交通局答弁A11〉

・令和4年度は、都営地下鉄の大江戸線月島駅や勝どき駅の壁面を利用した広告枠を増設するとともに、車両の更新に合わせ車内液晶モニターの設置などデジタル広告を充実

・また、都営バスでも、バス停留所の上屋に広告板を増設するなど、広告料収入の確保に向けて取り組み


Q12〉一方で局が持つ多様な媒体を、行政情報の発信にも役立てている事は有益だと考える。広告における行政関連の内訳について、伺います。


交通局答弁A12〉

・交通局では、都営地下鉄や都営バスなどにおいて、車内液晶モニター、車内広告、駅ばりポスターなど局の所有する様々な媒体を活用し、都政情報の発信に協力

・そのうち、都営地下鉄では、令和4年度は、中づりポスター、まど上ポスター、駅ばりポスターで約2割弱が行政関連の有償広告出稿


もり愛〉東京都では、様々な事業を行っていますが、必要としている方に届く情報提供が求められます。公共交通機関であれば、通学時の学生さんや、子育てママ等、行政機関に足を運ばない方にも、情報を届ける、良い広告媒体であると思います。

引き続き、都営交通における広告媒体の有効活用に向けて取り組みをお願いします。


最後に、都営交通における環境の取り組みについて伺います。


西武鉄道では、サスティナブル車両として、中古車両を受入れるとの発表がありました。SDGsの視点からも、車両の有効活用は有効だと考えます。


東京都交通局では、「ゼロエミッション東京戦略」における再生可能エネルギーの基軸エネルギー化の方針を受けて、令和3年より再生可能エネルギーを率先的に活用することで、環境負荷低減に取り組んでいることを高く評価しています。


Q13〉令和4年度における交通局の再生可能エネルギー導入の一環として太陽光パネルの設置状況について伺います。


交通局答弁A13〉

・交通局では、老朽化した庁舎の改修等の機会を捉えて、活用可能な屋上スペースに太陽光パネルを設置

・これまでに5か所の庁舎に合計116.5キロワットの太陽光発電設備を設置

・令和4年度は、大島庁舎及び江戸川自動車営業所臨海支所で改修等の工事を推進


もり愛〉庁舎に積極的な設置を行っていただいており、2021年度からは、水力発電による再生可能エネルギーの価値を高め、交通局の電気がRE100宣言企業等で活用されていると伺っております。持続可能な環境に寄与する都市交通として、CO2フリー電気の利用を高めるよう、引き続き、更なる取り組みの推進を求めます。


公営企業は独立採算の観点から経営改善が求められると同時に、公共交通として大変重要な役割を担って頂いております。

障がいのある方も、ベビーカーのお母さんも、ご高齢者も誰もが利用しやすい都営交通の一層の環境整備に取り組んでいただくことを願い全質問を終わります。