【ギャンブル依存症回復施設視察報告】
視察日時: 令和7年7月17日
視察先: グレイス・ロード東京センター(ギャンブル依存症回復支援施設)
1.視察の目的
コロナ禍以降、オンラインカジノやネットを利用した競馬・競艇等の普及により、ギャンブル依存症の低年齢化や患者数の増加が指摘されている。こうした現状を踏まえ、都内のギャンブル依存症回復施設を視察し、当事者支援や東京都として必要な施策について調査を行った。
2.施設概要
グレイス・ロード東京センターは、山梨県で薬物依存症支援を行うダルクの活動を基盤として、依存症当事者の就労支援や地域生活支援を目的に東京で設立された施設である。
令和5年9月より、障害者総合支援法に基づく「障害福祉サービス事業所」として東京都の指定を受け、「指定自立訓練(生活訓練)事業所」として運営されている。
施設では、「ギャンブル依存症は意思の弱さではなく病気であり、誰もがなり得るものである」という考え方のもと、回復支援を行っている。
3.視察内容
(1)ギャンブル依存症の現状
施設によると、コロナ禍以降はスマートフォンやインターネットを介したオンラインカジノ、ネット競馬、ネット競艇などへの依存が増加している。
依存状態になると、
- 朝から晩までギャンブル中心の生活になる
- 食事もおろそかになり、コーヒーだけで過ごすこともある
- 自分の問題を話せなくなる
- 家族や周囲、さらには自分自身にも嘘をつくようになる
など、生活基盤そのものが崩れていくという説明を受けた。
また、回復のためには本人だけでなく家族への支援も不可欠であり、当事者と家族双方を守る視点が重要であることが強調された。
(2)回復支援プログラム
施設では主に以下の支援を実施している。
① 回復プログラムの提供
「12ステッププログラム」を中心とした依存症回復プログラムを実施している。
② 安全な居場所の提供
- 日中に通所するデイケア施設
- 共同生活を行うナイトケア施設(2か所)
を運営し、依存症から回復するための安心できる環境を提供している。
③ 相談支援
電話相談や来所相談を実施し、本人や家族からの相談に対応している。
④ 予防啓発活動
依存症への理解促進や予防のための啓発活動を行っている。
⑤ アフターサポート
回復後の再発防止に向けた継続支援を実施している。
⑥ 関係機関との連携
医療、司法、行政、福祉、教育など多様な専門機関と連携しながら支援体制を構築している。
(3)回復におけるミーティングの重要性
施設では「依存症回復にはミーティングが極めて有効である」との説明があった。
実施されている主なプログラムは以下のとおりである。
グループミーティング
参加者が自らの経験を語り、他者の話を聞く「言いっぱなし、聞きっぱなし」のスタイルで実施される。共感や自己理解を深める場となっている。
エンパワメントグループ
参加者同士の質問やフィードバックを通じて、新たな気づきを得るプログラム。
ハウスミーティング
利用者とスタッフ全員で課題や問題解決策を話し合う場。
また、寺院でのボランティア活動や西新宿での清掃活動、スポーツプログラムなどを行い、社会とのつながりを回復する取組も行われている。
さらに、自助グループであるGA(ギャンブラーズ・アノニマス)への参加を重視しており、東京都内ではほぼ毎日複数箇所でミーティングが開催され、当事者同士が支え合いながら回復に取り組んでいる。
(4)回復までの道のり
施設では、ギャンブルをやめた日を「クリーン1日目」と位置付け、約13か月間の段階的なプログラムを経て退所を目指す。
しかし、途中でギャンブルをしてしまった場合は再び「クリーン1日目」からのスタートとなる。
回復までには一般的に2~3年程度を要し、再発を前提とした長期的な支援が必要であるとの説明を受けた。
また、回復を望んでも従来の生活環境にいるままでは難しいケースも多く、まずはギャンブルの引き金となる環境から離れることが重要とされている。
(5)家族支援
施設では家族会も運営されている。
依存症当事者の支援においては、本人だけでなく家族も大きな苦しみを抱えているため、家族同士が支え合う場が重要であるとのことであった。
また、施設スタッフの多くが依存症からの回復経験者であり、自らの経験を活かして当事者に寄り添った支援を行っている点も特徴的であった。
4.施設からの要望
施設からは次のような課題提起があった。
- 行政における依存症への理解が十分ではない
- 精神保健施策の中で依存症支援が十分位置付けられていない
- ギャンブル依存症に関する正しい理解を広めてほしい
- 回復には長い年月が必要であり、2年程度で解決する問題ではない
- 完治ではなく再発防止を前提とした伴走型支援が必要
- 再発時にも支援から切り離さない仕組みづくりが必要
なお、ギャンブル依存症専門の回復支援機関は全国でも約10か所程度と限られており、支援体制の不足も課題として挙げられた。
5.今後の課題
今回の視察を通じて、ギャンブル依存症は本人の意思の問題ではなく「病気」であり、誰もがなり得るものであることを改めて認識した。
特にコロナ禍以降はオンラインカジノやネット競馬・競艇等の利用拡大により、依存症リスクが身近なものとなっている。一方で、行政による支援体制や専門機関は依然として十分とは言えない状況である。
また、自治体は公営競技を通じて収益を得ている一方で、ギャンブル依存症対策については十分な事業展開がなされていない実態も浮き彫りとなった。
東京都においてもIR(カジノ)に関する調査研究費が毎年計上されている中で、ギャンブル依存症に対する理解促進、相談支援体制の充実、当事者及び家族が適切な支援につながるための環境整備を一層進めていく必要があると強く感じた。
さらに、依存症は再発を前提としながら長期にわたり回復を目指す疾患であることから、短期的な成果を求めるのではなく、当事者に寄り添い続ける伴走型支援を東京都として充実させていくことが重要であると考え、都政で取り組んでいきたいです。
















