2023年6月19日環境建設委員会では付託議案の議決が行われ、16日【建設局】付託議案審査、
【環境局】付託議案審査と報告事項質疑が行われ、もり愛は、都立公園の在り方について、生物多様性の保全の視点から神宮外苑開発の見直しを求め質疑を行いました。

環境建設委員会【環境局】質問  もり愛
まず、『東京都生物多様性地域戦略』について、伺います。

●知事は、巻頭の言葉で、東京都生物多様性地域戦略では、「生物多様性を回復軌道に乗せるネイチャーポジティブの実現を掲げました」と述べています。
 「ネイチャーポジティブ(自然再興)」とは、「昆明・モントリオール生物多様性枠組で掲げられた2030年ミッションであり、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること」です。

緑の評価、森の生態系の評価について、伺います。

「行動目標① 生物多様性バージョンアップエリア 10,000+」では、「公園・緑地などのみどりを新たに拡大していくこと」の視点が必要と述べ、2030 年までに行政として「みどりの質の維持・向上を図るエリア」と「みどりの量を確保・拡大するエリア」を合わせて10,000ha とすることを目指します」と述べています。

Q1,「ネイチャーポジティブ」のためには、緑の量だけでなく、緑の質も大切だと考えますが、緑の質について、どのように考えているのか、伺います。

A1)自然環境部長
緑には、生物多様性の保全や、人々の安らぎや潤い、防災、都市の熱環境や大気環境の改善など、多面的な機能がございます。
これらの機能を総称し、緑の「質」と呼び、生物多様性の保全にあたっては、こうした緑の多面的機能を一層発揮させていく事が重要と認識しております。

もり愛〉Q1 環境省では、「悠久の時によって育まれた巨樹・巨木林は、わが国の森林・樹木の象徴的存在であり、良好な景観の形成や野生動物の生息環境、地域のシンボルとして人々の心のよりどころとなるなど、保全すべき自然として重要である。」として、巨樹・巨木林調査を行っていますが、都の巨樹・巨木林に対する評価を伺います。

A2)自然環境部長 答弁
 都は、自然保護条例に基づき、自然の保護と回復を図る為、自然地において行う一定規模以上の土地の形質変更行為に対し、あらかじめ、開発許可を求める制度を運用
 本制度においては、良好な既存樹木を保存するため、天然記念物に指定されている巨木等に関し、必要な調査を行い、行為地内にそのまま残すか、または行為地内において移植する事について、適正な検討をする事を求めている。
 
もり愛〉只今のご答弁では、自然地と限定しているがために、民有地や管理されている土地は対象外となってしまい、都市の中で失われていく生物多様性の保全には、不十分であると危惧します。都市の中においては、自然地と限定することなく、良好な既存樹木を保全する制度となるよう、要望致します。
 

Q3、森は、大きな木だけで成り立っているのではなく、小さな木、草、土壌などが森の生態系を形作っており、一定の大きさの木の数だけで、森の生態系を評価することはできないと考えますが、都として、森林生態系をどのように評価しているのか、伺います。

A3)自然環境部長 答弁
奥多摩など山間部の森林は、木材生産機能や、水源かん養、土砂の流出防止、野生生物の生息・生育環境の提供など、多様な役割がある
森林は、干ばつ等により人の手が入り、林の中に光が入ることで、多くの下草や低木などが育成し、野生生物の生息環境が改善されると思慮しています。

もり愛〉多様性戦略では、「台地東部には高度な都市機能が集約する中、皇居や明治神宮などの大規模緑地や企業など民有の緑地があります。」と述べ、明治神宮については、「都心に残る大規模緑地 ~「永遠の 杜づくり」として「コラム」が設けられていますが、「明治神宮外苑」については、一言も触れられていません。

 明治天皇及び昭憲皇太后をご祭神とする明治神宮は国が、神宮外苑は日本全国の人々の献金と献木によって創建されたものであり、森林生態系としてはともに重要だと考えます。
都の明治神宮外苑に対する評価を伺いたかったのですが、生物多様性地域戦略の質疑において、神宮外苑開発については、所管外との事で、ご答弁を頂くことは出来ませんでした。

 行動目標①では、「開発などにより失われるおそれのある既存のみどりの確保の視点」や「人の利用に供する公園・緑地の拡大の視点」が指摘されていますが、
神宮外苑では、「再開発によって失われる既存の緑」が多くあり、また、「人の利用に供する公園・緑地」は拡大していないと考えます。

 明治神宮再開発で、事業者は1面広告を打って、「緑が増える」というのは「切って植えるから、緑はふえる」と述べています。 
「切って、植える」というのは、環境政策では、「ミティゲーション」の中の「代償措置」です。
「ミティゲーション」には、①「回避」(ある行為をしないことで影響を避ける)②「最小化」(ある行為とその実施に当たり規模や程度を制限して影響を最小化する)③「修正・修復」(影響を受ける環境の修復、回復、復元により影響を矯正する)
④「軽減」、(ある行為の実施期間中、繰り返しの保護やメンテナンスで影響を軽減または除去する)、⑤「代償」、(代替資源や環境を置き換えて提供して影響の代償措置を行う)
の5段階あり、「代償措置」は最後の手段です。

「代償措置」に行きつくまでの間に、「回避」、「最小化」、「修正・修復」、「軽減」のそれぞれの措置について、どのような検討がなされたのか、都民には全く見えません。

「切る樹木は743本」というのは、「3メートル以上の木の数」であり、日本イコモスによれば建国記念文庫の杜だけで3,000本の木が伐採されるという見解がありますが、事業者の見解は、森の生態系の考え方に即して正しいものと考えているのでしょうか、

 東京都生物多様性戦略でも、「東京の将来像を実現するための 2030 年目標」として、「自然と共生する豊かな社会を目指し、あらゆる主体が連携して生物多様性の保全と持続可能な利用を進めることにより、生物多様性を回復軌道に乗せる(=ネイチャーポジティブの実現)」が掲げられています。

 明治神宮外苑再開発において、「ネイチャーポジティブ」は、どの様に実現されるのでしょうか。

 ネイチャーポジティブ」は、方法論として「あらゆる主体が連携して生物多様性の保全と持続可能な利用を進めること」とされていますが、
明治神宮外苑再開発では、地域住民が説明会を求めても、日本イコモス委員会が意見交換を求めても「三井不動産は説明責任を果たしておらず、まさに、「無視と排除」の明治神宮再開発が行われています。

 明治神宮再開発において、「あらゆる主体が連携して生物多様性の保全と持続可能な利用を進めること」が、活かされるべきであると考えます。

 東京都環境影響評価条例」は、「計画の策定及び事業の実施に際し、公害の防止、自然環境及び歴史的環境の保全、景観の保持等(以下「環境の保全」という。) について適正な配慮がなされることを期し、もつて都民の健康で快適な生活の確保に資することを目的とする。」とされています。
 
 「ネイチャーポジティブ」は、環境影響評価に生かされるべきだと考えます。
(が、都の見解を伺います。)

 6月9日の衆議院環境委員会で、環境省は「環境影響評価は、住民から広く意見を聞き、専門家の意見も聞きながら、環境保全の観点からより良い事業とすることとするもの」と述べていますが、都として、明治神宮外苑再開発の東京都環境影響評価条例の運用について、住民から広く意見を聞いて、また、専門家の意見を聞きながら、進めるべきものと考え、こちらも要望致します。

 また、同じ委員会で、西村明宏環境大臣は、「東京都から相談があれば、助言をする」と述べていますが、東京都として、明治神宮外苑再開発の環境影響評価について、環境省や文部科学省に相談をしていないようですが、なぜ、相談しないのか、その理由を伺いたかったのですが、こちらも所管外との事ですので、

ぜひ、国に対して環境影響評価について、環境省・文部科学省に相談しながら、名勝指定の選定など、ぜひ保全に向けた都の積極的な姿勢を求めます。

 2022年2月、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」は、JR東日本に対して、鉄道遺構「高輪築堤」について、「発掘・記録・破壊のサイクル」の停止と、世界遺産級の文化財が破壊されそうな際に発出される「ヘリテージアラート」を発出しました。イコモスでは、既に、明治神宮外苑についても「ヘリテージアラート」の審議中であると聞いています。

 明治神宮外苑再開発は、現在は「イベント施設とオフィス・商業施設」へと変化していますが、都市計画の権限を有する東京都が、当初は「スポーツクラスター」をつくろうと主導してきた再開発であり、事業者だけに責任を押し付けるのではなく、広く専門家や住民の意見を聞いて進めるべきだと考えます。

今回、『生物多様性地域戦略』の策定についての質疑ですが、
どんなに素晴らしい計画を作っても、実際に目の前で失われていく生物多様性をそのままにする事は、計画そのものが空虚なものになってしまいます。
 
 環境アセスメント分野の国際学会である国際影響学会の日本支部は、昨日6月15日に
明治神宮外苑地区の環境アセスの手続きに問題があるとして、東京都に対し、事業者に工事の一時停止を命じるよう勧告がありました。

都の動きは、世界からも注目をされております。昨日都庁で会見された原科幸彦日本支部代表からは、「都の専門家の声を聞かない姿勢は、SDGsを求める世界の標準からかけ離れている」との指摘がありました。

東京都の都市の貴重な緑と生物多様性を守る為、都が責任をもって計画の見直しを行うよう、強く求めます。

『東京都生物多様性市域戦略』を、都市の再開発に携わる各局がしっかりと遵守するよう要望します。

〈東京都議会ネット中継より〉